与那国織とは
与那国織とは、沖縄県の南西諸島八重山列島にある、日本最西端に位置し温暖な気候の「与那国島」で作られる織物のことをいいます。
与那国島の豊かな自然に恵まれた植物を染料にした優しい色と島の伝統的な模様が織られた与那国織。南国を感じさせる美しい織物は、時代と共に新しい技術や技法を取り入れながら、多くの人を魅了しています。
一度は衰退した与那国織の歴史
与那国織の歴史は古く、500年以上前の1400年代後半には存在していました。朝鮮王朝の書物「李朝実録」には、1477年(室町時代中期)に与那国島に漂着した朝鮮人の見聞録が記されています。
現在の与那国織は絹糸・綿糸・麻糸・芭蕉糸などを使っていますが、見聞録によると、当時は苧麻(ちょま)で糸を作って布を織り、染料には藍を用いていたようです。
1500年代前半には、幾何学的に表現されている「与那国花織」が琉球王朝への納貢品に指定され、役人にのみ着用が許可されていました。また、海外との貿易が盛んだった琉球王朝の影響を受け、新たな技術や材料を取り入れながら与那国織は発達しました。
戦後は糸の入手が難しく魚の網を解いて布を織っていたといいます。また、一時は島での織物は衰退します。
しかし、1965年に政府が打ち出した「工業復興奨励補助」によって、与那国織を養成する指導所が作られます。1979年には歴史や資料を集めた「与那国町伝統工芸館」が建てられ、島の自然と風土を豊かに表現した織物文化は見事に復活。
1987年には経済産業大臣より国の「伝統的工芸品」に指定され、美しい島を感じさせる与那国織は今も作り続けられています。
一人一人の職人が作り上げる与那国織の特徴
織物は一般的に各工程を分業で行ないます。しかし、与那国織では図面作成から、染料となる与那国島で育つ車輪梅やハイビスカスなど植物の採取と染め、織りまでを一人の職人が一貫して担当。唯一無二の織物を作り上げます。
与那国織は技術や技法によって4つに分けられています。
与那国織の中でも最も生産量の多い「与那国花織」は格子柄に花模様が織り出される直線的な幾何学模様が特徴。柄により、ダチン花(八つ花)、イチチン花(五つ花)、ドゥチン花(四つ花)と呼ばれます。直線でできた構図の中で織り合わさる糸が上質な立体感を生み出し、小さな花が可憐に咲いているような印象を与えます。
「与那国ドゥタティ」は4枚の布を合わせて作られ、与那国の言葉で4つのことを「ドゥーチ」ということから、ドゥ(4枚)タティ(仕立て)と呼ばれています。
麻に似た苧麻(ちょま)や木綿から作られ、白、黒、青の色合いが特徴。筒袖の着物で衿は黒無地、袖は短く丈はひざ下ほどに仕立てられ、涼しく動きやすいように工夫されています。かつては島民の日常着として、今でも島の豊年祭などの行事で着用されます。
「与那国カガンヌブー」は主にドゥタティに締める細帯の呼び名。絣(かすり)模様が特徴で、帯の内側には男女の愛を表すミウト絣(夫婦絣)と呼ぶ2つの絣模様があります。昔は女性から男性へ愛を告白するものとして贈られました。
「与那国シダディ」は綿や麻地に福木やシャリンバイなどの草木染や泥染をした色糸を織り込んで作られる手ぬぐいです。かつては旅の安全と健康を祈る「守神」として織られていました。今でも主に祝いの席で使われ、男性は腰に下げ、女性は頭に巻いて使用します。また、米寿を終え亡くなった方の葬儀でも用いられています。
与那国織の現代での使われ方とお手入れ方法
与那国織は、着物や洋服、日常使いできる小物として使用されています。
着物としては、主に「与那国花織」が使用され、その上質な質感と優しい色柄は、大人の女性をおしゃれに美しく引き立てます。裏面に遊び糸がない与那国花織は、裏地付きの「袷」としてはもちろん、裏地のない「単衣」としても着ることができます。
島外の市場に出ることが少ない希少な「与那国ドゥタティ」は、独特の光沢が美しくお洒落に着こなすことができます。涼しげで暑い季節でも快適に着ることができるため、春から秋にかけて3シーズンで使われます。
与那国織の着物の着用場面は幅広く、主に普段の食事会や展示会などのカジュアルな場面で活用できます。上質でお洒落な大人の普段着として着こなしを楽しませてくれるでしょう。
与那国織の着物の日常的なお手入れは、気になる箇所の部分的なシミ落とし、全体的な汚れや長期的な収納前にはドライクリーニングをおすすめします。
柄の配置で一点ものとなる、与那国織を用いた小物の製作は大変盛んです。
「与那国花織」を用いたさまざまな形のバッグや財布は、上質感がありTPOを選ばず使うことができると人気があります。「与那国ドゥタティ」を使ったバッグは涼しげで、暑い季節のカジュアルな着こなしのポイントにオススメです。
ほかにも、上質な質感と合わせやすいシンプルさが魅力の与那国織のネクタイ。涼しげでお洒落な洋服や帽子は、見た目だけでなく着心地も良い逸品です。また、気軽に日常使いできるキーホルダーやコースター、クッションなど、新たなアイデアから幅広い製品が生み出されています。
与那国織の見学・体験ができる場所
与那国町伝統工芸館
所在地 | 沖縄県八重山郡与那国町与那国175-2 |
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電話番号 | 0980-87-2970 |
定休日 | 毎週日曜日、正月 |
営業時間 | 平日8:30~17:30 土曜8:30~17:00 |
HP | http://www.yonaguniori.org/ |
備考 | 与那国織の制作や資料の見学、織物や染物などの小物の販売を行っています。 |
徳美工房
所在地 | 沖縄県八重山郡与那国町字与那国2329 |
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電話番号 | 0980-87-2091 |
定休日 | 日曜日 |
営業時間 | 10:00~18:00 |
HP | http://www.satomikoubou.com/ |
備考 | 反物や小物の制作と販売(オーダーメイド可)体験教室(コースター800円、ティーマット1,500円) |