若狭めのう細工とは
若狭めのう細工とは福井県小浜市で制作されている貴石細工。めのうは仏教での7種の宝玉、七宝のひとつとされ、古くから重用されていました。若狭めのう細工は200~300℃に熱する焼入れという工程により、半透明な赤色に仕上がります。その鮮やかな赤の色彩は祝い事の贈り物としても人気があり、鯉や鶏などの動物の形に加工された置物もあります。
日本の貴石細工のルーツ、若狭めのう細工の歴史
若狭めのう細工の歴史は古く、奈良時代にまでさかのぼります。その次代、現・福井県小浜市周辺には遠敷(おにゅう)という地域がありました。そこへ玉を信仰する鰐族(わにぞく)という渡来人の一族が現れます。鰐族は若狭一の宮神社の前の鰐街道で玉造りを行い、それが若狭めのう細工の始まりとなりました。若狭めのう細工は日本の貴石細工のルーツです。
今に伝わる細工方法が確立されたのは、起源である奈良時代から1000年以上経った江戸時代中期1716~1735年の頃。大阪の眼鏡屋に奉公に行っていた玉屋喜兵衛が故郷の若狭に帰ってきました。玉屋喜兵衛は奉公先でめのうの原石を焼成して、赤くする技術を身につけていました。その技術をめのうの玉造りに使用し、現在の若狭めのう細工の技法が誕生するのです。しかし、当時はまだ玉造りしか行われていませんでした。
明治初期、若狭めのう細工職人であった中川清助は、めのうでより豊富な表現ができないか模索していました。そして、めのうを彫刻する技術を開発。これまで玉造りのみであっためのうを動物の形に彫刻し、飾り物としての需要を作り出します。また、中川清助は若狭めのう細工を広く知ってもらおうと、作品を精力的に国内外の美術博覧会に出品。技術の高さや美しさが高く評価され、若狭めのう細工は美術工芸品としての地位を確立するに至りました。
戦後、めのうの産地であった北海道での産出量の低下や、現在の消費税の前身となる物品税が導入されたことにより、300名程いた職人の多くが細工職人をやめてしまいました。しかし、残った職人たちは伝統を継承して生産を続け、若狭めのう細工は1976年に国の伝統的工芸品に指定されています。
熟練の技が光る若狭めのう細工の特徴
若狭めのう細工の特徴は繊細な作業と手間をかけて作られた細工の美しさです。
めのうとは半透明で非常に硬い鉱石、石英です。若狭めのう細工ではかつては北海道産のめのう、産出量の低下した現在はブラジル産のめのうが使用されています。
細工の工程の始まりはまずめのうを確認すること。検石と呼ばれるこの工程では原石であるめのうを確認し、彫刻用にするか装飾用にするかなど用途を決めます。めのうを隅々までチェックし、その模様や色、内部に空洞があるかを確認。内部まで綺麗に詰まっためのうであれば彫刻用、空洞がある場合は一部を切り出して装飾用にします。
検石が終われば、大切りの工程です。検石で決めた用途に合わせて石を大まかに切断。切断には弓式切断機という専用の機械を使います。めのうは硬い鉱石のため、この大切りの工程は非常に時間がかかります。切り終わっためのうは一定期間放置。この野晒しという工程は、次の焼き入りでめのうを綺麗な赤に染めるために行われます。放置することで、切っためのうの内部が酸化するのを待つのです。
めのうが酸化したら、いよいよ焼き入りの工程です。灰の中に原石を置き、炭を使って200~300℃で焼いていきます。酸化しためのうに含まれる鉄分が熱せられることで、めのうは赤く変色。しかし、温度が低すぎたり、高すぎたりすると石の透明度が失われる、割れるなどの事態が起こってしまいます。そのため、職人の腕が試される工程です。最近では電気釜も使用されますが、その場合も300℃で数日かけて焼成が行われます。
焼き入りを終えためのうは、まだ大まかな大きさに切っただけの赤い石の塊です。今度はそれを制作するものに合わせてカット。釘状の鉄矢(てつや)という道具で形を削り出し、段階的に大きさを変えた砂でさらに細かく削っていきます。
形の削り出しが終われば磨きの工程。目の細かい砂を使い、泥磨きを行います。そして磨き粉で仕上げです。これにより削られて尖っていた彫刻の表面は滑らかになります。制作物によっては、この磨きの作業だけで1ヶ月以上かかる場合も。最後の磨きによる摩擦熱で制作物が割れてしまうこともあるため、磨きの工程はとても神経を使う作業です。
一連の作業は一人の職人の手によって行われます。このように繊細で複雑な若狭めのう細工は、簡単な勾玉を完成させるだけでも3日。制作物によっては職人が1ヶ月から1ヶ月半近くもつきっきりで作業を行います。温度調整や摩擦熱など細かな調整が熟練の職人の技で行われ、ようやくひとつの若狭めのう細工が完成するのです。
若狭めのう細工の現代での使われ方
若狭めのう細工の鮮やかな赤色は、特にお祝いの場面で人気が高いです。そのため、動物の置物や香炉などは贈り物としても使われています。
さらに、現代ではお椀や箸置きなどの日用品、ペンダントなどの装飾品も生産され、普段遣いが可能な商品が生産されています。
若狭めのう細工の見学・体験ができる場所
若狭工房
所在地 | 福井県小浜市川崎3丁目4番 |
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電話番号 | 0770-53-1034 |
定休日 | 水曜(祝・祭日は開館)12月28日~1月1日 海の日から8/1までは休まず営業 |
営業時間 | 9:00~18:00(12-2月9:00~17:00) |
HP | http://wakasa-koubou.com/ |
備考 | めのう磨き、模様付け体験可能 |
宗助工房
所在地 | 福井県小浜市西勢58-19 |
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電話番号 | 0770-52-5448 |
定休日 | お問い合わせください |
営業時間 | お問い合わせください |
HP | https://www.facebook.com/sousukekoubou/ |
備考 | 工房見学は要事前連絡 |