牛首紬とは
牛首紬(うしくびつむぎ)とは、石川県の白石市で作られている織物を指します。2匹の蚕によって作られる玉繭と呼ばれるものから糸を紡ぎ、手作業で織られているのが特徴です。機械化が進む中でも、ほとんどの工程が手作業で行われている珍しい織物でもあります。
また、別名「釘抜紬(くぎぬきつむぎ)」とも呼ばれ、釘にひっかけても釘が抜けてしまうほど丈夫な織物としても知られています。糸を紡ぐのが難しいとされる玉繭は、以前はくず繭として避けられていました。しかし、牛首紬ではその玉繭を使い、美しい織物を作り上げているのです。
このことから、牛首紬を作る職人の技術力の高さが伺えます。牛首紬は1998年に国の伝統的工芸品にも指定されており、現在までさまざまな作品が作られてきました。最近ではカジュアルな織物も増え、普段使いできるような着物なども作られています。
牛久紬の歴史は機織りが得意の妻女が作り上げた
牛久紬は石川県の旧牛首村、現在の白峰地区に継承する製法で織られた紬織です。牛首紬の起源は、1159年の平治の乱に敗れた源氏の落ち人が当地へ逃れ、城を構えて再起を狙っていた際に、その妻女が機織りが得意だったことが始まりとされています。得意の機織りの技を村人に伝授し、織物の文化を伝えました。
その後の牛首紬に関する最古の記述は、1643年に京都の俳人松江重頼が記した「毛吹草」に記されています。白峰地区は古くから養蚕が盛んだったとされていて、生糸にならなかったくず繭と機織りを用いて、1600年から1700年の間には紬が織られ始めていたのではないかと考えられているそうです。
【明治時代に最盛期を迎える紬】
明治に入ってからは麻織物と共に紬織も盛んになり、各地への訪問販売を通じて全国への販路が拡大します。その後の大正時代には、紬織の最盛期を迎えました。その後、経済不況と太平洋戦争で人々が贅沢品を控えるようになり、紬織業者は廃業を余儀なくされたといわれています。
しかし、その衰退期にも兼業家内生産によって牛首紬の伝統技術は伝承され続けていたのです。1955年からは白峰の地場産業復興活動の一環として桑畑が再興されて養蚕に取り組み始め、紬工場も再建されました。
【再興後の発展】
紬工場の再建後は徐々に牛久紬が発展し、現在のような美しい織物がたくさん作られるようになります。1974年には旧白峰村の桑島地区にあった工場が近隣の町などに移転し、それぞれの土地で牛久紬が作られるようになりました。
玉繭を使って作る牛首の特徴
牛首紬の最大の特徴は、玉繭と呼ばれる材料を使っていることです。玉繭とは1つの繭の中に2匹の蚕がいる繭を指し、不規則に糸が重なり合っています。2匹の蚕が吐き出す糸が絡まり合い、独特の雰囲気や味わいを生み出します。
玉繭を使って作る牛首紬は、紬織と絹の上品な光沢が楽しめるでしょう。玉繭から紡ぎ出した糸は通常よりも太く、弾力性や伸縮性が生まれてシワへの抵抗力があるのも特徴です。
【土地ならではの気候で生み出された特徴】
湿度が高い白峰で織られることで保湿・吸湿・通気性があり、柔らかくてなじみが良い着心地に仕上がります。湿度が高い場所で作られていたからこそ、快適で着心地のよい着物に仕上がったのでしょう。
【加賀友禅の染色技法を使用】
牛首紬の復興期には新たな試みとして、石川県の代表的な伝統工芸のひとつでもある加賀友禅の染色を施しました。友禅を染付けたものは格式高い紬に生まれ変わり、セミフォーマルの着物としても活用できるようになったそうです。
加賀友禅の技術を取り入れたことで、従来の紬織では考えられない新たな特徴を牛首紬に加えることになりました。有名な友禅作家が染色したものも多くありますが、全て牛首紬のブランドとして販売されています。
【パリコレクションでも採用】
織物といえば和装の際に着用するものですが、最近ではパリコレクションでも採用されるなどさまざまなシーンで活躍。和装だけでなく洋装用の素材としても使われており、海外でも注目されています。
現代での使われ方とお手入れ方法
従来、紬織はカジュアルなものとされ続けていました。しかし、加賀友禅の染色を施した訪問着や袋帯が登場したことによって、カジュアルからセミフォーマルまで幅広く利用できるようになりました。
使用上の注意点は通常の着物や帯と同様に、着物と帯は別々にきちんとたたんで保管することです。シワに強い素材ですが、長期の保管では余計なシワが入ってしまうことがあるので、保管の仕方には注意しましょう。
また、保管中の湿気は着物が傷む原因になります。湿度の高いときには吸湿し、湿度の低いときに放湿する特性のある桐箪笥での保管が最適といわれていますが、桐箪笥がない場合は通常の箪笥に乾燥剤や防虫剤を入れて保管してください。
湿気などが気になるときは、天気の良い日は虫干しをするのもおすすめです。虫干しは着物が吸った湿気を放出し、乾燥した空気を吸ってもらうために行います。虫干しができない場合は、特に除湿に気をつけて保管するようにしましょう。
自分では取れない汚れやトラブルが発生したときは、専門店に頼むのもおすすめです。無理に対応しようとせず、相談してみてください。
牛首紬の見学・体験ができる場所
牛首紬 織りの資料館 白山工房
所在地 | 石川県白山市白峰村ヌ17 |
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電話番号 | 076-273-2400 |
定休日 | 年末年始、お盆 |
営業時間 | 9:00~16:00 |
HP | https://www.hakusan-koubou.jp/ |
備考 | 施設見学、体験 |
加藤手織牛首つむぎ
所在地 | 石川県白山市桑島イ1番地26 |
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電話番号 | 076-259-2736 |
定休日 | お問い合わせください |
営業時間 | お問い合わせください |
HP | https://www.katoteoriushikubi.com/ |
備考 | 工房見学 |