丹後ちりめんとは
丹後ちりめん(たんごちりめん)は、京都府丹後地方で生産される絹織物です。さまざまな着物の生地が作られており、その美しさで多くの人を魅了しています。
長い歴史を持つ丹後ちりめんは、優れた品質を備えた高級絹織物として有名。現在も伝統的な技法を守りながら生産されており、日本の和装文化を支え続けています。
丹後ちりめんの歴史と絹屋佐兵治
丹後ちりめんの歴史は、奈良時代まで遡ります。711年、元明(げんめい)天皇は、丹後を含めた21の国に挑文師(あやとりのし)という技術者をつかわし、錦(にしき)や綾(あや)の織り方を学ばせました。この出来事が、丹後地方の絹織物の始まりとされています。
それ以降、丹後では質の高い絹織物が生産されるようになりました。奈良時代の書物には、739年、丹後の国鳥取郷(現在の京丹後市弥栄町)で作られた「絁(あしぎぬ)」という絹織物が、聖武(しょうむ)天皇に献上された記録が残っています。絁は、丹後産の最も古い絹織物。現在も奈良正倉院(しょうそういん)で大切に保管されています。
ちなみに、ちりめんの文化が日本に伝えられたのは、西暦200~300年代のこと。明(みん)から入ってきたちりめんの技術は、少しずつ日本の文化に浸透していき、安土桃山時代には本格的な国産化が始まります。
その後、ちりめんが京都の西陣にも伝えられると、「西陣縮緬」と呼ばれる製品が次々に作られ、高い人気を獲得。江戸時代になると、「お召ちりめん」も登場し、西陣のちりめんはどんどん発展していきます。
しかし、京都西陣の製品が人気になると、丹後では需要が減少。「田舎絹」と呼ばれるようになり、次第に売れなくなっていきました。収入が減ったことに加え、凶作や年貢の取り立ても重なり、丹後地方の人々は困窮していきます。
1720年、京都のちりめんを学んだ絹屋佐平治(きぬや さへいじ)は、丹後の苦しい状況を打開するため、独自のちりめん織を開発。丹後の機屋(はたや)に広く伝えていきました。絹屋佐平治が初めて織ったとされるちりめん織は、現在も禅定寺(ぜんじょうじ)に保管されています。
1722年には、織物問屋の木綿屋六右衛門(もめんや ろくえもん)が、手米屋小右衛門(てごめや こえもん)、山本屋佐兵衛(やまもとや さへえ)を西陣へ送り、新しい技術を学ばせます。西陣の技術を取り入れた3人は、現在のようなシボのある製品を開発し、丹後に広めていきました。
新しいちりめん織が発展していくと、峰山(みねやま)藩が積極的に保護を行うようになり、丹後は一大産地へと成長していきます。生産がより本格的になったのは、1730年のことです。西陣の大火で織り機が焼け、多くの職人が丹後へ流入。この出来事により、丹後への注文が大幅に増えることになり、発展が加速したとされています。
丹後ちりめんはその後も進化し続け、多種多様な製品が開発されました。1900年には、第5回パリ万国博覧会に出品され、銅賞を受賞。日本の優れたちりめん織が、海外からも人気を集めることになります。
1927年の丹後大震災では、多くの織り機が破損。丹後のちりめん織は大きな打撃を受けてしまいますが、各業界からの支援を受け、徐々に回復していきました。
1955年頃からは、織り機を1回ガチャンと動かすだけで万単位の収入になるといわれるほど、織物の需要が増加します。「ガチャマン時代」と呼ばれたこの時期には、丹後ちりめんの人気も上昇。より多くの需要に応えるため、製品の改良も積極的に行われます。
2017年には、『300年を紡ぐ絹が織り成す丹後ちりめん回廊』が日本遺産に認定。丹後ちりめんの歴史や文化が、より多くの人から注目されるようになりました。
シボによって美しくなる丹後ちりめんの特徴
丹後ちりめんの大きな特徴は、表面の「シボ」と呼ばれる凸凹です。シボがある絹織物はシワになりにくいため、美しい状態を長く維持できます。凸凹の乱反射で絹の光沢が柔らかくなり、しなやかな風合いが出ることも魅力。染め上げたあとの色合いにも深みがあるため、その美しい見た目が多くの人から愛されてきました。
シボができる秘密は、経糸(たていと)と無撚(むねん)の生糸を強く撚り(より)、緯糸(よこいと)に交互に織り込んだうえで、不純物をなくす精錬(せいれん)という作業を行うこと。その作業によって糸が縮み、緯糸の撚りが少し戻るため、凸凹が形成されるのです。
丹後ちりめんは、シンプルな「無地ちりめん」、模様をつけた「紋ちりめん」に分けることができます。ほかにも、金糸を織り込んだ「金通しちりめん」、緯糸を二重にした「紋意匠ちりめん」、生糸だけで作られる「絽・紗ちりめん」など、さまざまな種類のちりめんが人気です。
丹後ちりめんの現在とお手入れのコツ
現在の丹後ちりめんは、時代に合わせた新しい製品が数多く作られています。伝統的な絹を用いた製品のほかにも、ポリエステルやレーヨンなどを使った製品が登場。日常の中で使いやすい織物として、新たなファンを獲得しています。
2005年頃からは積極的に海外展開が行われており、世界的な有名ブランドで丹後の生地が使われることも多くなりました。従来の和装に加えて、洋装やインテリアなども開発されており、海外からの需要も増えています。
さまざまな丹後ちりめんを長く使い続けるためには、適切な方法で保管することが大切です。使ったあとのちりめんは、すぐにたたまず、一度ハンガーにかけましょう。いったん風通しをしておくと、汗や体温を取った状態で保管できます。
丹後ちりめんは湿気に弱いので、しまっておく箪笥は、桐(きり)の製品がおすすめ。吸湿性の高い桐箪笥を使い、湿気の影響を受けにくい下段に入れておくと、劣化を防ぐことができます。
長く保管する際に虫の被害を防ぐには、年に1~2回陰干しにしてください。6~10月は虫の動きが活発になるので、なるべく箪笥の外へ出すようにしましょう。
丹後ちりめんの見学・体験ができる場所
丹後織物工業組合 加工場
所在地 | 京都府京丹後市大宮町河辺3188 |
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電話番号 | 0772-64-2490 |
定休日 | 要問い合わせ |
営業時間 | 要問い合わせ |
HP | https://tanko.or.jp/association/factory/ |
備考 | 工場見学あり |
株式会社ワタマサ
所在地 | 京都府与謝郡与謝野町字岩屋961-3 |
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電話番号 | 0772-43-0032 |
定休日 | 要問い合わせ |
営業時間 | 要問い合わせ |
HP | http://www.watamasa.jp/index.html |
備考 | 丹後ちりめんの販売、工場見学あり |