高岡銅器とは
高岡銅器とは、富山県高岡市で作られている鋳物です。高岡市は国内有数の銅器生産地であり、現在日本で製造されている銅器のほとんどを、高岡銅器が担っているといわれています。
「銅器」という名前ではありますが、実は原材料は銅だけではありません。金や銀、鉄やアルミなども使用しながら、それぞれの素材を十二分に活かした製造・加飾技術が特徴的です。明治時代にはパリなどの万博博覧会にも出品し、海外での人気も高い鋳物のひとつとなっています。
高岡銅器の歴史と7人の鋳物師
高岡銅器のはじまりは、江戸時代にまでさかのぼります。
二代目加賀藩主・前田利長(まえだとしなが)は高岡城を築城するおりに、城下町の発展を願って鋳物工場を建造しました。このとき呼び寄せられた7人の鋳物師が、のちの「高岡銅器」の礎を築くことになります。
当初は、鍋や釜などの鉄器を主に作っていた鋳物師たち。しかし、江戸時代中期には生活様式の変化に伴い、銅合金鋳物を求める声が増えていきます。特に仏具は、身分を問わず人気の高い銅鋳物でした。
その後も高岡銅器の需要は高まり続け、特に火鉢や茶道具などの製作が盛んになっていきます。さまざまな形状の製品が作られる中で、着色や彫金といった加飾方法も洗練されていきました。
明治から大正へ時代が移り変わる中では技術革新も起こり、生産量が爆発的に増加。これにより、高岡銅器の芸術性は全国に知れ渡ることになります。
そうして高岡銅器は1975年、国の伝統的工芸品に指定されました。
素材の良さを余すことなく活かす高岡銅器の特徴
高岡銅器の美しさについて語る上では、彫金や着色といった加飾方法の話は外せません。
彫金では、タガネという道具を使って銅器の表面に模様を彫りこんでいきます。タガネは数十種類もの数があり、それぞれ彫ることができる形が異なります。そのため、職人は表現したい彫り方に合わせてタガネを使い分け、芸術的な模様を仕上げていくのです。
着色では、高岡銅器の表面に特殊な薬品をかけて、化学反応を発生させます。そうすることで、赤に近い「赤焼色(あかやきいろ)」や黄色に近い「宣徳色(せんとくいろ)」、緑に近い「青銅色」や「ガス青銅色」などを表現。非常に多彩な色合いが表現できる点も、高岡銅器の特徴といえるでしょう。
また、高岡銅器に主に用いられる銅は、鉄よりも加工性が高く、細やかで複雑な形も作り上げることができます。小型から大型のものまで、大きさ問わず加工できる点も、高岡銅器の特徴のひとつです。
さらに、金や銀、鉄やアルミといったさまざまな金属を扱うことができ、ニーズに合わせた素材の選定・加工も可能。使用する素材の豊富なバリエーションはもちろん、その全てを十二分に活かせる技術は「高岡銅器の職人を置いてほかにはいない」といっても過言ではありません。
高岡銅器の現代での使われ方とお手入れ方法
高岡銅器は、仏具や花器、置物といった伝統的な製品はもちろん、現代ではイヤリングやネックレスといったアクセサリー類、風鈴などの小型製品も人気を集めています。中には、大型ブロンズ像や大仏を製作する工房もあります。
1つの製品を完成させるまでには数カ月を要すことが多いため、値段はやや高め。しかし、高岡銅器の細やかで複雑な形状、繊細な加飾を見れば、値段以上の価値を感じることができるでしょう。
日常的なお手入れ方法は、非常に簡単。柔らかい布で空拭きするだけで、高岡銅器のつやが一段と輝きを増します。汚れがひどい場合は、ワックスや真鍮(しんちゅう)磨きをつけて磨くと、あっという間に元通り。
真鍮ブラシを使用するときには、高岡銅器の表面が乾いていることをよく確認します。水気があると、着色が剥がれる恐れがあるためです。真鍮ブラシで汚れを落とした後は、中性洗剤を溶かした水とブラシで洗い、水でよく流します。
水分を拭き取って乾燥させた後は、刷毛でワックスを塗り、柔らかい布で丁寧に空拭きしましょう。この手順で取れない汚れがある場合は、購入元へ相談することをおすすめします。
また、高岡銅器が割れた・穴が空いてしまったという場合も、購入元へ修理依頼してみてください。溶接で修理するだけでなく、漆などで色直しもしてくれます。さび止めを同時に依頼すると、より長く高岡銅器を楽しむことができるでしょう。
このような修繕技術は、歴史的な彫像や建築物にも応用されています。法隆寺の釈迦三尊像や薬師寺の金具など、高岡銅器の製造・加飾技術を用いることで、本来の姿を取り戻すことができた例もあります。高岡銅器の技術は新たな製品を作るだけでなく、「古き良きものを蘇らせる技術」としても非常に価値が高いといえるでしょう。
高岡銅器の見学・体験ができる場所
高岡銅器展示館
所在地 | 富山県高岡市蜂ケ島131-1 道の駅 万葉の里高岡内 |
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電話番号 | 0766-30-0850 |
定休日 | お問い合わせください |
営業時間 | 8:30~17:30 |
HP | https://www.takaokadouki.net/ |
備考 | 見学・販売あり |
大寺幸八郎商店
所在地 | 富山県高岡市金屋町6-9 |
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電話番号 | 0766-25-1911 |
定休日 | 火曜日(祝日の場合は営業) |
営業時間 | 10:00~17:00 |
HP | https://ootera.com/ |
備考 |
・アクセサリーキットの販売 送料込みで3,300円 ・錫のアクセサリー体験、オリジナル表札づくり |