石州瓦とは
石州瓦(せきしゅうがわら)とは、島根県石見地方で生産されている伝統的な瓦です。
独特な赤い色が特徴で、とくに寒冷地で広く使用されており、山陰地方では赤い屋根が広がる光景を目にすることができます。
古くから瓦の生産が行われてきた石見地方には脈々と伝統が受け継がれており、特に耐久性に優れた日本を代表する瓦の一つです。
石州瓦の歴史と、大坂から招かれた瓦師・甚太郎の貢献
石州瓦が生産されている石見地方では、古くから瓦の生産が行われていたと考えられており、奈良時代には国分寺の建設で石見の瓦が使用されていたと伝わっています。
釉薬(ゆうやく)が使用されるようになると、瓦の耐久性が飛躍的に向上し、寺院以外の建築物にも広まっていきました。
時を隔てて安土桃山時代、中国の瓦職人によって「いぶし瓦」が伝来。
織田信長が安土城で初めていぶし瓦を使用し、その後は全国の城でいぶし瓦の屋根が主流になります。
その後、豊臣秀吉による文禄・慶長の役で出兵していた武将たちが朝鮮から陶工を連れてきて、石見にも朝鮮人陶工による窯が開かれたことが、瓦の生産に影響を与えました。
このように中国や朝鮮の瓦生産の技術が導入されたことにより、現代に近い高品質の瓦が生産され始めます。
江戸時代に入ると全国各地で城下町が建設され、石見でも浜田城とその城下に建設された武家屋敷などで瓦が大量に必要になりました。
このとき大坂から招かれた瓦師の甚太郎が、瓦の生産から屋根の施工まで指揮を執り、浜田城の天守閣が完成。
これが石州瓦のルーツになり、地場産業として本格的に石見に根付いていくことになります。
石州瓦のさらなる発展に大きくかかわったものとして、瓦と同じく陶器である石見焼があり、江戸時代中頃から生産が盛んになりました。
石見焼の陶器は寒さに強くひび割れしにくいことが、石州瓦の生産にも活かされ、寒冷地の家屋で広く使用され始めます。
それに加えて、島根県東部の出雲地方にある来待(きまち)地区で産出する「来待石」を原料とした釉薬が使用されるようになります。
来待石は耐火度が非常に高いため、より高温で瓦を焼くことが可能になり、瓦の耐久性の向上に大きく貢献。
また来待石が鉄分を含んでいるため、このときから石州瓦の特徴である赤い色が定着しました。
このように品質が高くなっていった石州瓦は、江戸時代から明治にかけて北前船(きたまえぶね)と呼ばれる貿易船で日本海沿岸各地に広まりました。
現在でも寒冷地では石州瓦の赤い屋根が多く見られ、日本海側や北国では代表的な景観となっています。
独特な色と高い耐久性を持つ石州瓦の特徴
石州瓦の特徴として、まず目につくのは独特な赤い色です。
その赤い瓦によって造られた屋根は山陰地方の代表的な景観で、古くから旅人たちを魅了してきました。
石州瓦の赤い色は、「来待石」に含まれる鉄分が由来です。
石州瓦は来待石だけを原料とした釉薬を使用することにより、1350℃という高温で焼成することが可能になりました。
石州瓦の中でも特に来待石を使用した瓦を「来待瓦」と呼び、より高品質な銘柄として区別しています。
瓦には本来、微小な穴が存在しており、ここから水分が入って凍ると膨張した氷が瓦にひびを入れてしまう原因になります。
石州瓦はほかの瓦より高温で焼くことにより微小な穴がなくなり、水分を吸収しにくくなることが凍害を防ぐ効果を生み出したため、寒冷地で広く使用されてきました。
水分を吸収しにくいことは、凍害のみならず塩害にも強い瓦になっているため、石州瓦は温暖な地域でも特に海岸に近い家屋の屋根として重宝されています。
また石州瓦は重いため、頑丈な家屋を建てる必要があり、そのことが結果的に風雨や地震などの自然災害に強い家屋となる効果をもたらすことに。
このようにメリットの多い石州瓦ですが、価格が高価なところがデメリットです。
それだけ生産には手間がかかっており、原料にもこだわって生産されているため仕方ありませんが、高い耐久性により長く使用できることは間違いないでしょう。
石州瓦の現代での使われ方とお手入れ方法
石州瓦は一般家屋の屋根瓦としてはもちろん、神社仏閣の屋根瓦にも使用されています。
凍害に強いため、特に寒冷地で広く使用されてきましたが、水分をほとんど吸収しないため塩害にも強く、沖縄のような南国でも石州瓦は人気です。
屋根瓦の一部として、屋根の角に配置する家紋を入れた瓦や、古くから魔除けとして使用されてきた鬼瓦も生産されています。
屋根瓦以外の用途としては、土間や地面に並べて歩く場所を作るための敷瓦(しきがわら)や、壁を造るタイルとして使用する壁瓦などがあり、いずれも平らな形です。
また石州瓦は、伝統を継承しながら新しい用途も考案されてきました。
水分や油分をほとんど吸収せず、高い耐熱性があり直火にかけることができるので、近年は鍋などの調理器具や、料理を盛りつけて温めるための耐熱食器としても使用されています。
さらに、瓦の形状を活かして小皿や箸置きも生産されています。
屋根瓦としての石州瓦は、普段のお手入れ方法は全く必要ありません。
経年劣化により割れや欠けが発生したときには、その部分の瓦だけを交換し、雨漏りなどを防ぐことができます。
また、屋根の棟の部分に塗られている漆喰(しっくい)が劣化したときは、塗り直すなどの補修をするとよいでしょう。
石州瓦の見学・体験ができる場所
株式会社シバオ
所在地 | 島根県大田市水上町白坏658番地1 |
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電話番号 | 0854-89-0201 |
定休日 | お問い合わせください |
営業時間 | お問い合わせください |
HP | https://www.shibao.co.jp/ |
備考 | 【製品情報の請求】 石州瓦に関する各種カタログと、瓦の違いが分かるDVDを無料で請求することができます。 【工場見学】 工場見学を受け入れています。詳しくはお問い合わせください。 |
亀谷窯業
所在地 | 島根県浜田市長沢町736番地 |
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電話番号 | 0855-22-1807 |
定休日 | お問い合わせください |
営業時間 | お問い合わせください |
HP | http://www.kamedani.com/index.html |
備考 | 【工場見学】 工場見学を受け入れています。詳しくはお問い合わせください。 |