螺鈿とは
螺鈿(らでん)とは、漆器などに施される装飾のひとつです。夜光貝などの美しい貝を使い、宝石のような美しさに仕上げます。「螺」は螺旋状の貝殻を指し、「鈿」は貝や金属などを使う飾りを指します。
螺鈿に用いられる巻貝は一般的に栄螺(さざえ)のように渦を巻いたものを指しますが、現在ではアワビ・夜光貝・シジミ・蝶貝なども使われています。どの貝も色合いが美しく、キラキラと輝くような見た目をしているのが特徴です。
材料となる貝に彫刻を施し、漆器の表面や木地などにはめ込む技法が螺鈿と呼ばれています。非常に繊細な技法で、少しの加減で表面の輝き方や色合いが異なるのも魅力のひとつです。さまざまな文様や模様が表現される螺鈿ですが、使う貝の種類によっても仕上がりが異なります。
海などで貝の内側が七色に輝いている様子を見たことがある人も多いと思いますが、螺鈿はあの美しい色を活かして作られる装飾と考えるとイメージしやすいでしょう。
紀元前3000年から作られていた「螺鈿」の深い歴史
螺鈿が最初に作られるようになったのは、なんと紀元前3000年のエジプトだといわれています。今から5000年以上前に最初の螺鈿が作られたと考えると、当時のエジプトの技術力の高さがよく分かるでしょう。
エジプトで作られていた当初も、現在と同じように貝のキレイに光る部分を切ってはめ込んでいたようです。初期王朝の頃のものとされる遺跡からは、立派な螺鈿が施された装飾品が多数出土されています。
【日本に伝わったのは奈良時代】
日本に螺鈿が伝わったのは奈良時代で、エジプトからではなく中国の唐からとされています。作り始めたばかりの頃は琥珀や鼈甲(べっこう)と組み合わせながら、楽器の装飾に多く使われていたそうです。
時代が進んで平安時代になると、螺鈿の技術は急激に発達しました。蒔絵(まきえ)などと併用することでさらに美しい装飾品が作られるようになり、時代や文化の発展とともに螺鈿の技術も発達・継承されていきます。
【鎌倉時代には螺鈿が流行】
鎌倉時代には螺鈿が巷で流行になるほど人気が高まり、馬の背中に乗せる鞍の装飾に用いられることが増えました。当時は馬での移動が主流だったため、煌びやかな鞍を乗せてオシャレを楽しんでいたようです。
さらに時代が進むと、海外との貿易などを介してさらに発展します。この頃にはひとつの産業として認められ、ヨーロッパなどへの輸出用の調度品も多く作られていました。それらは海外でも高く評価され、ヨーロッパでは高級品として扱われるようになります。
【江戸時代には貝の染色技術が発達】
江戸時代に入ると、貝を好みの色に染色して使うようになります。貝を染色することにより作品作りの表現の幅が広がり、それまで以上にさまざまな作品が作られるようになりました。しかし、鎖国によって海外との貿易が縮小されたため、職人たちは国内へ向けた作品作りに切り替えます。
職人たちは貿易の縮小にも負けず、江戸時代から現在に至るまで変わらない伝統技術を継承してきました。
宝石のような輝きを放つ「螺鈿」
螺鈿の特徴は、なんといっても宝石のような美しい輝きでしょう。貝を材料とする螺鈿だからこそ生み出せる、独特かつ繊細な美しさを楽しめます。貝殻それぞれが持つ色や形、厚さを見極めながら作品に合わせて加工していくため、熟練の技術が必要なのも特徴のひとつ。
使う貝の種類や色合い、磨き方や着色などによっていろいろな表現ができます。アレンジの幅が広いからこそ、作り手の性格や個性が感じられるのもうれしいポイントでしょう
【薄貝と厚貝の仕上がりの差】
螺鈿に使われる貝にはいろいろな種類がありますが、大きく薄貝と厚貝の2つに分けられます。薄貝はその名の通り薄い貝を指し、極限まで削ってから漆などの表面に張り付けるようにして加工していくのが一般的です。
一方で厚貝は厚みのある貝を指し、漆器などに埋め込むようにして使われます。薄貝を使った螺鈿は繊細で美しい仕上がりになり、厚貝を使った螺鈿はインパクトのある仕上がりになるのが特徴です。
【幅広い作品が作られている】
螺鈿は煌びやかで派手なイメージがありますが、実際には日常的に使えるようなシンプルな作品も多いです。漆器全体に螺鈿を施すのではなく、ワンポイントとして使うことで、上品かつ派手すぎないお盆やグラスなどを作っています。
貝殻を上手く削って花びらのように見立てたシンプルなものから、ドラゴンや孔雀を表現したインパクトのあるものまで幅広い作品が楽しめるのも魅力的です。
螺鈿の現代での使われ方とお手入れ方法
螺鈿は漆器に使われることが多いため、どうしても高級なイメージがあります。しかし最近では、日々の生活の中で使えるようなオシャレなグラスやお盆、小物入れなども多く製造。中にはスマホケースやアクセサリーなどもあり、現代に合わせた作品を作る職人たちの努力が伺えます。
螺鈿製品は手垢や油分が付きやすいので、購入した際はこまめに手入れを行いましょう。アルコールを含ませたティッシュなどの柔らかいもので表面を拭き、汚れを落とします。少しのお手入れだけで、見た目がグッと良くなるでしょう。特に普段身につけるアクセサリーやスマホケースの場合は、日々のお手入れが重要です。
硬い布や眼鏡拭きなどで拭いてしまうと、傷を付ける可能性があるので注意しましょう。
螺鈿の見学・体験ができる場所
嵯峩螺鈿 野村
所在地 | 京都府京都市右京区嵯峨釈迦堂大門町26 |
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電話番号 | 075-871-4353 |
定休日 | 定休日 年中無休(年末年始休み有り) |
営業時間 | 9:00~18:00 |
HP | https://sagaraden.com/ |
備考 | 体験、商品購入、工房見学 |
工房ヤマセン 辻佛檀
所在地 | 富山県魚津市金浦町4-10 株式会社工房ヤマセン辻佛檀 |
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電話番号 | 0765-22-2094 |
定休日 | お問い合わせください |
営業時間 | 8:00~19:00 |
HP | https://yamasen.theshop.jp/ |
備考 | 体験、商品購入、工房見学 |