本場大島紬とは
本場大島紬(ほんばおおしまつむぎ)は、鹿児島県で作られている高級絹織物です。発祥の地は、奄美大島(あまみおおしま)。現在も、奄美地方を中心に生産が続けられています。
美しい絣模様をもつ本場大島紬は、海外でも高評価。ゴブラン織、ペルシャ絨毯とともに世界三大織物に数えられており、国内外問わず人気があります。
本場大島紬の歴史と奄美大島の織物文化
本場大島紬の起源は、いまだ明らかになっていませんが、飛鳥時代が始まりとされています。養蚕が盛んだった奄美大島では、600年代から絹織物が作られており、紬も多く生産されていました。
奈良時代に建立された東大寺正倉院(しょうそういん)には、「南国から赤褐色の着物が献上された」という記録があり、現在まで続く泥染めという染色方法が、古くから行われていたことがわかります。その後も奄美では盛んに生産が行われ、1700年代には産地が形成されました。
初期の大島紬は島民がよく使う織物でしたが、江戸時代になると制限がかけられてしまいます。1702年、薩摩藩が出した紬着用禁止令により、島民は紬を使えなくなりました。それ以降、大島紬は藩への献上品となり、一部の人だけが使う高級織物として生産されるようになります。
大島紬が商品として作られるようになったのは、明治時代に入ってからです。1877年から市場での取引が開始され、より多くの人が紬を使い始めました。1890年、第3回内国勧業博覧会に出品されると、知名度も徐々に上昇。1903年の第5回内国勧業博覧会では、宮内省の買い上げとなります。
製作技術が発展していくと、染色方法も変化。さまざまな手法の植物染めは、次第に行われなくなります。大島紬の染色は、車輪梅(しゃりんばい)というテーチ木染めと、泥染めの2種類に統一されていきました。
明治中期になると、大島紬の需要はさらに増加。生産量が多くなると、従来の真綿から紡いだ糸は使われなくなり、練玉(ねりたま)糸を使った技法が主流になります。
1907年からは、締め機(しめばた)という専用の織機を使った技法が登場。より精密な模様を表現できるようになり、美しい絣模様が施された紬も多く作られるようになります。
より現在の製品に近いものが出てきたのは、大正時代中期。練玉糸を使った技法が本絹練糸を用いたものに変化し、現在のような光沢を表現できるようになったのです。1921年には、ほぼすべての製品に本絹練糸が使われるようになり、美しさに磨きがかかっていきます。昭和に入ると、染色技法の研究も進み、表現の幅がさらに広がっていきました。
第二次世界大戦が始まると、多くの大島紬が失われてしまいますが、1950年に資金が投入され、再び生産が活発化。白地泥染大島紬や色大島紬など、新しい製品も次々に開発されていきます。
1975年、国から伝統的工芸品に指定されると、大島紬の知名度はさらに上昇。現在も、奄美大島の代表的な名産品として、多くの人から愛されています。
渋みと美しさを備えた本場大島紬の特徴
本場大島紬は、車輪梅と泥染めによる渋い風格が有名です。車輪梅による製品は、テーチ木のタンニンで糸が赤褐色に染まります。泥染めの場合は、タンニンと泥の鉄分が化合することで、黒色に染まることが特徴です。
職人が熟練の技で施す模様は、主に自然の草花をモチーフにしたもの。時代性や技術の進化によって、さまざまな模様が作られてきましたが、モチーフはほとんど変わっていません。男性向けの柄と女性向けの柄があり、その中でも多くのバリエーションが生み出されています。
また、表面の光沢も、大島紬の美しさを構成する要素のひとつ。大正時代に開発された本絹練糸の技法が、しっかりと受け継がれているのです。技術が洗練され、さらに輝きを増した優雅な光沢は、現在も多くの人を魅了しています。
本場大島紬は、見た目だけでなく、着心地の良さも抜群。とても軽いので、長く着用していても疲れません。さらりとした肌触りも、気持ちよさを感じさせてくれます。通気性と保温性に優れているため、夏は涼しく、冬は暖かいことも特徴。どの季節に使っても、常に快適です。
裏表のない丈夫な生地は、シワになりにくい性質があり、長期間の使用にも適しています。長く使うほど肌に馴染み、着崩れしにくい紬になっていくので、着心地の良さもさらに向上。親から子、孫へと引き継がれる場合も多く、世代を超えて愛用されています。
本場大島紬の現在とお手入れのコツ
現在の本場大島紬は、伝統的な製品だけに頼らず、新しいデザインを積極的に開発しています。和服だけでなく、洋服も多く作られるようになりました。上質な生地を材料にしたネクタイや座布団、ブックカバーなどは、新しいファンを獲得。バッグや小物にも大島紬が使われるようになり、活躍の場はどんどん広がっています。
また、昔とは違うフォーマルな製品も登場。かつては正装に向かない織物とされてきましが、礼装として違和感のない模様が考案され、優れた製品が数多く生産されています。
高品質な本場大島紬を長く使い続けるには、手入れもしっかり行うようにしましょう。飲み物や醤油、ソースなどで汚れた場合は、そのまま放置せず、すぐに部分洗いをしてください。汚れの下に綿布などを敷き、濡らしたタオルで叩くように吸い取る方法もおすすめです。ひどい汚れの場合は、無理に薬品などを使わず、専門店に依頼しましょう。
着用後は、湿気をとばすための陰干しも大切。風通しの良い場所を選び、しっかり乾燥させましょう。使っていない紬も、年1回は干すことをおすすめします。
本場大島紬の見学・体験ができる場所
大島紬村
所在地 | 鹿児島県大島郡龍郷町赤尾木1945 |
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電話番号 | 0997-62-3100 |
定休日 | 年末年始(12月31日、1月1日) |
営業時間 | 9:00~17:00 |
HP | http://www.tumugi.co.jp/ |
備考 | 本場奄美大島紬製造見学、大島紬村亜熱帯植物庭園、泥染・手織り・着付体験、大島紬販売 |
原絹織物株式会社 仁左エ門工房
所在地 | 鹿児島県奄美市名瀬鳩浜260 |
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電話番号 | 0997-52-2857 |
定休日 | 日・祝日 |
営業時間 | 平日 9:00~17:00、土曜 要連絡 |
HP | http://www.nizaemon.jp/ |
備考 | 機織り体験、泥染め体験 |