大阪浪華錫器とは
大阪浪華錫器(おおさかなにわすずき)とは、大阪府大阪市で生産されている伝統的な器です。
元々は京都で茶の湯の習慣とともに広まった錫器ですが、江戸時代に生産拠点が大阪に移り、庶民の生活用品として広まりました。
錫は金属としては柔らかくて機械加工が難しいため、現在でも職人の手作業によって加工される錫器は、その独特な味のある光沢が多くの愛好家を魅了しています。
大阪浪華錫器の歴史と錫屋伊兵衛
錫器の歴史は古く、西暦600年代初頭の遣隋使によって初めて日本にもたらされました。
当時の錫器は中国からの輸入に頼っており、日本での錫器製造はまだ少なかったのですが、700年代に製造されたと思われる錫器が正倉院に納められています。
日本で本格的に錫器が製造されるようになるには、鎌倉時代まで待たなければなりませんでした。
臨済宗の開祖として名高い栄西が修行のために宋に渡りますが、帰国の際に茶の種を持ち帰って日本に喫茶の習慣を広めるきっかけを作り、このとき茶壷を製造する職人も一緒に連れてきました。
職人の作る茶壷が錫を材料としていたために、茶壷としての錫器が日本に広まり始めます。
それまでは限られた貴族の間でしか行われていなかった茶の湯が、一気に武士や町人にまで広まり、同時に京の都で錫の茶壷の製造技術が広まっていきました。
やがて茶壷のみならず、お神酒の徳利にも使用されるなど、より格式の高い物へと昇格することに。
江戸時代中期になると錫器の生産拠点が市場経済的に有利な大坂へと移ります。
庶民向けの洒落た生活用品としての錫器が生産され流行し、浪華の錫器は一大産業になりました。
江戸時代後期には京錫の流れを取り入れた初代錫屋伊兵衛が創業し、大阪浪華錫器の一角となります。
大阪浪華錫器は昭和初期に最盛期を迎え、錫屋も隆盛を極めます。
第二次世界大戦が始まると物資の不足や職人の招集で錫器の生産が落ち込みますが、大戦後の1949年には錫屋の今井弥一郎が「大阪錫器株式会社」を設立。
現在、唯一の大阪浪華錫器製造業者として、その伝統を守っています。
白銀に輝く大阪浪華錫器の特徴
大阪浪華錫器の特徴は、手作業で作られているゆえの独特な肌触りとぬくもり、酒の味を引き立てる効果、茶葉などの保存効果が高いことなどが挙げられます。
錫は金属としては柔らかいため機械での加工が難しく、錫器の製造はほとんどの工程が手作業で行われます。
そのためひとつひとつの作品に微妙に違いがあり、それぞれに味があるため、自分だけのオリジナルの器という愛着も生まれます。
大阪浪華錫器は耐久性も高いため、愛着とともに長く使用することができます。
錫器は錆びないために古来からお神酒の徳利として使用され、のちに花瓶としても使用されるようになるなど、酒や水の容器として優れた適正があります。
また、近年人気の高いタンブラーは器の表面に手作業による凹凸がつけられており、持ちやすさとともにビールの泡が発生しやすく、その泡を長持ちさせるといううれしい効果もあります。
その泡はグラスや陶器の器に注いだときよりもはるかにきめ細かく、濃厚な味わいを楽しめるため、多くのビール好きの人々を魅了しています。
錫は熱伝導率が高く、陶器と比較して温まりやすく冷えやすいため、熱燗や冷酒の器として適しているうえ、心地良い口当たりが楽しめます。
茶壷として広まった歴史を持つ錫器は、近年は茶筒として広く使用されています。
茶筒は職人が肉厚な錫をろくろによる手作業で削り、ミクロ単位で正確に寸法を取ります。
そのため、容器の開け閉めが容易でありながら内容物は密封され、劣化を防ぎます。
大阪浪華錫器の茶筒は気密性が高いため、湿気と酸化を防ぎ、さらに容器が肉厚なので紫外線からも守られ、茶葉を長持ちさせることができます。
大阪浪華錫器の現代での使われ方とお手入れ方法
大阪浪華錫器は古くから茶壷や急須、お神酒の徳利、盃、仏具などとして使われており、現代でも神事などの格式の高い儀式にたびたび使用されています。
日常的な用途としては茶筒、菓子入れなどの収納用容器として、また御猪口やタンブラーといった飲酒用にも広く利用されています。
耐久性が高いため、花を長時間水につけておく必要がある花瓶としても使用されています。
大阪浪華錫器は、いくつかの点に注意することによって長持ちさせることができます。
まず、錫器はデリケートな材質なので、レモンなどの酸性の強い液体を入れると変色したり、冷凍庫で保管すると錫器にひび割れが起きる可能性があるので注意が必要です。
絶対にしてはいけないこともいくつかあり、錫は融点が低いため錫器を直火で熱すると変形などを起こすことや、金属製なので電子レンジに入れて加熱することもできません。
一方で、大阪浪華錫器の日常のお手入れ方法は、特別難しいことは必要ありません。
使用後にぬるま湯と中性洗剤で優しく丁寧に洗い、よくすすいでから水気を切って自然乾燥させるか、清潔な乾いた布で水気を拭き取って保管します。
錫器は金属としては柔らかい材質なので、落としたりぶつけたりしないように取扱いに注意し、優しく丁寧に扱うことによって長く愛用することができます。
大阪浪華錫器の見学・体験ができる場所
大阪錫器株式会社
所在地 | 大阪府大阪市東住吉区田辺6-6-15 |
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電話番号 | 06-6628-6731 |
定休日 | 土日祝日 |
営業時間 | 9:00~17:00 |
HP | http://www.osakasuzuki.co.jp/ |
備考 | 大阪市が主催する体験会や、あべのハルカスで体験会が行われるなど、各地で定期的に錫器制作の体験会が開催されています。 |
BECOS
所在地 | 東京都千代田区大手町2-6-1 朝日生命大手町ビル3F |
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電話番号 | 03-6260-8486 |
定休日 | 土日祝 |
営業時間 | |
HP | https://www.thebecos.com/collections/osakapewterware |
備考 | 日本の伝統工芸品を販売しているECサイト。大阪錫器の商品を購入することができます。 |