大阪金剛簾とは
大阪金剛簾(おおさかこんごうすだれ)は、大阪府の富田林市、河内長野市、大阪市で製造している竹製のすだれです。上質でしなやかな天然竹と、色鮮やかな錦の縁、二つのコントラストが目に美しいのが特徴的。格調高い装飾品としての側面と、四季に寄り添う生活必需品の側面をもつ大阪金剛簾は、日本の伝統美を今につたえています。
1994年には大阪府知事より「大阪の伝統工芸品」に、1996年には経済産業大臣より「日本の伝統的工芸品」に指定されました。
竹かごからうまれた大阪金剛簾の歴史
日本のすだれの歴史は、平安時代にさかのぼります。日本最古の歌集「万葉集」にすだれが登場する歌がありました。額田王(ぬかだのおおきみ)という歌人が天智天皇に宛てたものです。
天智天皇のおかかえ歌人だった額田王が、宮廷で詠んだ歌の一つ。「君待つと 我が恋ひをればわがやどの 簾動かし秋の風吹く」~あなたの訪れを待って恋しい想いを募らせていると、我が家の入り口のすだれが動きました。お越しになったかとときめいたのもつかの間、秋の風が吹いただけでした。~平安時代には、すだれが生活の中に存在していたことがわかります。
神殿や宮殿のすだれは「御簾(みす)」と呼ばれ、他人と一線を引くために使用。当時の家屋は部屋を仕切る壁がなく、間仕切りには布や御簾を活用していたのです。外側から中が見えないため、人の目から姿を隠すという意味合いがありました。源氏物語や枕の草子にもたびたび登場します。
「大阪金剛簾」の起源は江戸時代初期の1655年頃、新堂村(現・富田林市)に身を隠して暮らしていた武士が、竹をつかったかごづくりを村人たちにつたえたのが始まりです。
大阪と奈良の県境に位置する金剛山のふもとには、古くから自生していた良質な真竹がありました。真竹は肉厚で弾力性があり、曲げや圧力に強いことから竹細工に適しています。
竹かごづくりの技術をベースに、京すだれの技法を取り込んだ大阪金剛簾は、富田林市周辺を産地として広がっていきました。当初は天皇や将軍、大名、豪商の権威を示す室内装飾品として用いられましたが、後にはお座敷すだれ、日よけ、目隠しとして庶民にも愛用されることとなったのです。
1948年には河内長野市で、カッターと呼ばれる機械をつかって竹ヒゴを切断するという画期的な技術が考案されました。これまですべての工程を手作業でおこなっていたすだれづくりに、革命がおきたのです。1960年代には住宅の建設ラッシュにともない、すだれ産業も全盛期を迎えました。
昭和後期から平成にかけて日本家屋が少なくなったことにより、すだれの需要は縮小し製造業者も減少しました。
大阪の歴史と風土に育まれた大阪金剛簾を応援するために、1985年大阪府知事は「大阪の伝統工芸品」に指定1996年には経済産業大臣により「日本の伝統的工芸品」として指定されました。
天然竹と錦のコントラストが美しい大阪金剛簾の特徴
大阪金剛簾は、良質でしなやかな天然竹をていねいに削り、割って、編み上げます。まっすぐにそろった竹ヒゴ、竹の節をずらして描く「くの字」の文様、柄や大きさに寸分の狂いもない錦の縁は古来から脈々と受け継がれてきた精巧な職人技です。
夏の涼を運ぶ風物詩のイメージが強いすだれですが、大阪金剛簾は夏だけのものという固定概念を取り払うため、商品開発に取り組んでいます。
【製造工程】 1.真竹の伐採 (最も水分の少ない10月から翌年2月に伐採します)2.切断(乾燥後、用途別の長さに切ります)3.皮むき(小刀で節をはぎ、皮はぎ包丁で上皮をはぎます)4.竹割り1(竹割包丁で丸竹を幅8分に荒割り、さらに4分に割ります)5.竹割り2(上皮と身を二分します)6.ヒゴ作り (幅4分の上皮を各すだれに合わせて選別、カッター機にかけます )7.艶だし(細くなったヒゴの艶をだします)神社・仏閣用は黄色に染めてから艶だし8.編み上げ (ヒゴを編み機にかけ、1本ずつ編みます)9.錦の裁断(錦織物の原反をはさみで誤差が出ないように裁断します)10.縁付け (編み上がった簾の端や中央に縁を縫いつけます)11.仕上げ (金具や房をつけて完成させます)
大阪金剛簾の現代とお手入れ方法
大阪金剛簾は現代も、神社・仏閣で伝統的な様式を受け継いで使用されています。一般家庭でも仏間や日よけにつかわれているほか、インテリア用品としてブラインドやシェード、タペストリー、パーティションなど多種多様な用途として人気が再燃。海外輸出品としても新たな展望を見据えています。
秋田県の伝統的工芸品である樺細工と大阪金剛簾の協同によりうまれた照明は、(財)伝統的工芸品産業振興協会主催の「平成20年度フォーラム事業」に出展され、和洋がミックスしたモダンなデザインであるとして評価を得ました。
大阪金剛簾のお手入れ方法は「はたきおとす」のが正解です。たたくのではなく「はたく」。はたきでそっと汚れを落とすのです。白木の素材と違って、水洗いや水拭きはしないでください。乾拭きでも要注意。竹の気孔が目詰まりしてしまいます。
大阪金剛簾の見学・体験ができる場所
すだれ美術館 (井上スダレ株式会社)
所在地 | 大阪府河内長野市天野町1014-1 |
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電話番号 | 0721-53-1336 |
定休日 | 完全予約制 |
営業時間 | 平日10:00〜16:00 |
HP | https://sudare.com/osakakongo/ |
備考 | 隣接の井上スダレにて見学可 |
杉多製簾株式会社
所在地 | 大阪府富田林市若松町5丁目1番5号 |
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電話番号 | 0721-25-1111 |
定休日 | 土・日・祝祭日休み 夏季のみ土曜日も営業 |
営業時間 | 午前8時~午後5時 |
HP | http://sugitaseiren.co.jp/index.html |
備考 | 工場見学可 |