奥会津昭和からむし織とは
「奥会津(おくあいず)昭和からむし織」とは、福島県大沼郡昭和村で作られている伝統的な織物です。
昭和村は人口1200人ほどの小さな集落です。この昭和村で糸作りから織りまで、すべての工程を、代々受け継がれている技術を用い手作業でおこなっています。
糸作りの技術は特に高く、習得するのでさえ長い年月を要します。そうした技術継承を経て、一年以上かけて一つの織物が完成するのです。
そんな手間暇かけてできあがるからむし織は軽くて丈夫なため、夏の衣服としてたいへん優秀な織物です。衣服以外に、小物や装飾品としても使われます。
ちなみに、「からむし」は奥会津昭和からむし織のほかにも、重要無形文化財の越後上布・小千谷縮布の原料としても出荷されています。
代々受け継がれる奥会津昭和からむし織の歴史
豊かな山々に囲まれ、自然と共存してきた昭和村では、生活に必要なさまざまな道具を地元の素材から作り出してきました。そのうちのひとつが「からむし織」です。
原料となる昭和村のからむし栽培は約600年前から始まりました。からむしとは、イラクサ科の植物で、糸の原料になっている植物です。資料としては、1756年の村内の青苧畑証文が最古の文書として残っています。
昭和村は豪雪地域であったため農作物の生産が難しく、からむしは村の貴重な商品作物でもありました。昔は日本全国で栽培されていたからむしでしたが、現在は昭和村と沖縄宮古島でしか採れない貴重なものです。
そんなからむし栽培やからむし織は、代々親から子へ、姑から嫁へと伝えられていき、昭和村を代表する織物となりました。
1991年には「からむし生産」や繊維を取り出す「苧引き(おひき)」の作業が国の選定保存技術に指定。しかし村の人口や織物の需要減少などから、からむし栽培やからむし織が存続の危機に陥ります。
そこで1994年、昭和村は村の活性化やからむし技術の継承のために「織姫体験制度」を開始します。この制度は、からむし織に興味のある女性を全国から募集し、研修生としてからむし織の一連の作業を体験してもらうものです。
この制度のおかげで多くの技術者が誕生し、からむし織の存続の大きな力となりました。今では「彦星」と題して男性の担い手も募集し、伝統的な工芸品を村一丸となって守っています。
そして2013年に「からむしに関する生産用具・製品」が重要有形民俗文化財に指定され、3年後の2015年には「奥会津昭和からむし織」が国の伝統的工芸品に指定されました。
日本の夏にぴったりな奥会津昭和からむし織の特徴
「奥会津昭和からむし織」のいちばんの魅力は、品質の高さにあります。国の選定保存技術にも選ばれている昭和村の「からむし生産・苧引き」によって、手間暇かけて作られるからむし織。
工程としては、7月にからむしの収穫をし、収穫したからむしを剥いで繊維を取り出す「苧引き」をおこないます。そのあと「苧績み(おうみ)」という糸を紡ぐ作業へ。一本一本手で糸を繋いでいくため、帯一本分の糸を紡ぐのに約2ヶ月ほどかかります。
そうした糸作りの作業を経て、11月ごろにようやく織りの作業に取り掛かるのです。このように、からむし織を一つ完成させるためには、熟練の技術と根気が欠かせません。
そしてできあがったからむし織は、丈夫なつくりと軽さ、優れた通気性と吸湿性を兼ね備えているため、日本の夏にぴったりです。さらっと着られるからむし織は、一度着るとほかの織物が着られなくなるほどの着心地だともいわれています。
糸に使われるからむしは「苧麻(ちょま)」「青苧(あおそ)」とも呼ばれる植物です。茎の部分にある外皮の内側の繊維を糸に使用します。
染料には天然の藍染や化学染料を使っていますが、素材の状態や風合いによって独特な色味が楽しめるのも魅力的です。
奥会津昭和からむし織のお手入れ方法
「奥会津昭和からむし織」は現在、着尺や帯、ショールなどの身につけるものや、コースターやお財布などの小物類の制作・販売がおこなわれています。
お手入れとしては、着物は日陰干ししたりホコリを落としたりするなど、基本的な着物のお手入れをおこなうことをおすすめします。コースターは手洗いでの手入れが可能です。
奥会津昭和からむし織は丈夫であり、着れば着るほど、年月が経つほどに馴染んでくる織物です。そんな経年変化も楽しめるように、お手入れをして大切に使っていきましょう。
奥会津昭和からむし織の見学・体験ができる場所
道の駅 からむし織の里しょうわ 織姫交流館
所在地 | 福島県大沼郡昭和村大字佐倉字上ノ原1 |
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電話番号 | 0241-58-1655 |
定休日 | 年末年始 |
営業時間 | 9:00~17:00 |
HP | https://www.karamushi.co.jp/michinoeki.html |
備考 |
【コースター織体験】 金・土・日・祝日開催(要事前予約) 1人1,000円(材料費・送料込・税抜き) |
道の駅 からむし織の里しょうわ からむし工芸博物館
所在地 | 福島県大沼郡昭和村大字佐倉字上ノ原1 |
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電話番号 | 0241-58-1677 |
定休日 | 年末年始 |
営業時間 | 9:00~17:00 |
HP | https://www.karamushi.co.jp/michinoeki.html |
備考 |
からむしの歴史や作品などの見学ができます。 【入館料】 小中学生:150円 高校生以上:300円 |