小千谷縮とは
小千谷縮(おぢやちぢみ)とは、新潟県小千谷市で作られている麻織物のことを言います。苧麻(ちょま)という麻の一種で作られていること、また昔からの製法を守り続けてきたことにより、1955年に国の重要無形文化財、2009年にはユネスコの無形文化遺産に登録されました。小千谷縮の歴史と堀将俊
小千谷縮の起源は、もともと小千谷市で織られていた「越後麻布」という麻織物と言われています。
越後麻布は、冬の間は農業を行うことができない農民の副業の一つとして、広く生産されていました。この越後麻布を改良したのが、江戸時代中期に小千谷市にやって来た「堀将俊(ほりまさとし)」という人物。
もともとは明石出身の武士だった堀将俊は、織物の技術に造詣が深かったと言われています。堀将俊によって改良された越後麻布は「越後縮」と呼ばれるようになりました。
堀将俊はこの越後縮の作り方を村人たちに教え、広めていきます。やがて多くの村人たちが、この越後縮を織るようになり、越後縮は「小千谷縮」にその名前を変えていきました。堀将俊はその死後も、小千谷縮の発明という功績を称えられ、彼を祀るために明石堂というお堂が建てられています。
その後、近代化によってヨーロッパのさまざまな素材が流入してきたり、戦争が起こりその産地も甚大な被害を受けたりしたことで、小千谷縮は存続すら危ぶまれることが何度もありました。
しかしそのたびに、縮産業を支える人々がその技術を絶やすまいと力を尽くし、次の世代、また次の世代へと技術を伝え続けていったのです。
このように、小千谷縮を愛し、守り抜いた人々の努力によって、今日でも私たちは小千谷縮を楽しむことができるのです。
「涼しさ」を演出する小千谷縮の特徴
小千谷縮の一番の特徴は、製造の過程でできる細かなシワである「シボ」。このシボが、シャリシャリとした独特の肌触りとなり、爽やかな着心地に繋がっているのです。
シボがあることで布が肌に密着することがなく、服の中にこもった熱気が外に出ていきやすくなると考えられています。また、苧麻という素材も通気性に優れ、汗をよく吸い取るといった効果を持っています。
こうした、シボと苧麻の相乗効果によって、袖を通した時に感じられる、小千谷縮ならではの気持ちのよい「涼しさ」が生まれているのです。
この「涼しさ」は小千谷縮が生まれた当初から注目されており、江戸時代には幕府が武士の衣服としてこの小千谷縮を採用したこともあったそう。
そんな小千谷縮ですが、これを作るにはいくつもの工程があります。作業工程の最初は、小千谷縮の糸を作ることから。苧麻(ちょま)をぬるま湯に浸けて柔らかくしてから、指先で繊維を細かく裂いていきます。裂いた繊維は指で繋いでいって糸にするので、集中力が必要なうえに非常に時間がかかる作業です。
指で繋いだ糸は、専用の機械に巻き取り、撚り(より)をかけていきます。この撚りをかける作業が非常に重要で、強い撚りをかけることで、布にした時にシボが生まれるのです。
撚りをかけてできた糸は、灰水(あく)に一晩浸けたあとで加熱し、そのあと雪にさらします。雪国である小千谷ならではのこの手法は「雪さらし」と呼ばれ、もともとはやや茶色っぽい糸を真っ白にするために行われます。
糸が雪さらしで白くなったら墨で印を付け、染色をしていきます。染色には人工の化学染料を使うこともありますが、藍、草木染など昔ながらの自然由来の染料を使った染め糸も人気です。
糸の染め方は、「くびり絣(かすり)」と「すりこみ絣」の2種類があります。くびり絣は、指を使って糸にたんねんに染料を揉みこんでいく方法です。すりこみ絣は、ヘラに染料を付け、あらかじめ決められた図案に従って染料をすりこんでいく方法です。
自然染料で糸を染める際は、何日も繰り返して染め直すことで、次第に濃い色になっていきます。糸を染めたら、いよいよ織り機で布を織っていきます。
あらかじめ織り機に経糸(たていと)を仕込んでおき、模様が付けられた緯糸(ぬきいと)を織っていきます。この時、緯糸を一本通すたびに、染色作業をする際に付けておいた印を合わせることによって、布に模様が織りだされていきます。
そうしてたんねんに織っていき、ようやく織り上がった布は、ぬるま湯の中で手もみされます。この時、布が縮もうとする性質によって細かなシワであるシボができるのです。湯もみが終わった布はもう一度雪さらしを行うことで、独特の風合いと光沢が生まれます。ここまできてようやく、小千谷縮は完成するのです。
このように小千谷縮は、たった一反作るだけでも、多くの時間と手間がかかります。しかし、この時間と手間こそが、小千谷縮を多くの人から愛される織物たらしめているのです。
技術が発展した今日ですが、小千谷縮は今でも、その工程のいくつかを昔ながらの方法で行うことが定められています。
定められた工程は「すべての苧麻は手うみした糸(手で作った糸)を使用すること」「絣模様を付ける場合は手くびりにすること」「いざり機(床に座るタイプの織り機)で織ること」「シボとりをする場合は湯もみ、足ぶみすること」「さらしは雪さらしにすること」の5つ。
この5つの工程を守り続けていくことで、伝統的な小千谷縮の作り方は、何世代にもわたって受け継がれ続けてきたのです。
小千谷縮の現代での使われ方とお手入れ方法
サラリとした肌に心地よい素材である小千谷縮は、着物や浴衣として、今でも広く親しまれています。通気性がよく、肌触りも心地よい小千谷縮は、気温が高く湿気も多くなる夏に着用するのにぴったり。
さらに、化学技術の発達により、さまざまな色や種類の染料が多く生み出された現代では、色とりどりの小千谷縮を楽しむことができるように。今では、着物や浴衣だけでなく、ワンピースなどの素材としても利用されています。
中には、小千谷縮を使用したウエディングドレスなどもあり、衣服の素材として、さまざまな用途に使われるものとなりました。さらには、その通気性や放湿性を利用して、マスクも開発されるようになっています。他にも、その爽やかな触り心地を生かしたシーツや、インテリアの素材としても注目度が高まりつつあります。
そんな、さまざまな用途に使われる小千谷縮ですが、お手入れの方法はとっても簡単。中性洗剤を少量入れた水の中で、ゆっくりと優しく押し洗いをするだけです。あとは陰干しをしてあげれば、小千谷縮はまたサラリとした着心地に戻ってくれます。
小千谷縮の見学・体験ができる場所
小千谷織物工房「織之座」ギャラリー
所在地 | 新潟県小千谷市城内1丁目8-25 |
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電話番号 | 0258-83-2329 |
定休日 | 水曜日 |
営業時間 | 10:00~17:00 |
HP | https://ojiya.or.jp/koubou/ |
備考 | 小千谷縮の技法についての説明や、織物の道具が展示されています。 |
小千谷織物工房「織之座」
所在地 | 新潟県小千谷市城内1丁目8-25 |
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電話番号 | 0258-83-2329 |
定休日 | 水曜日 |
営業時間 | 10:00~16:00 |
HP | https://ojiya.or.jp/koubou/ |
備考 | 【体験メニュー】コースター織 600円 かすり織 900円 リボン作り 900円 |