小千谷紬とは
小千谷紬(おぢやつむぎ)とは、新潟県小千谷市で織られている絹織物のことです。緯総絣(よこそうがすり)と呼ばれる、緯糸(ぬきいと)に絣(かすり)糸を用いて織られる絣模様や縞模様、無地のものや白いものなど、さまざまな模様のものが織られています。
2つの織物から生まれた小千谷紬の歴史
小千谷紬の起源は、同じく小千谷市で織られている「越後上布(えちごじょうふ)」と「小千谷縮(おぢやちぢみ)」という、2種類の麻織物です。
もともと、小千谷市では「越後麻布」という麻織物が、冬の間は農業を行うことができない農民の副業の一つとして生産されていました。
これを改良したのが、江戸時代中期に兵庫県明石市から小千谷市にやって来た「堀将俊(ほりまさとし)」という人物。
織物の技術に造詣が深かった堀将俊は、この越後麻布を改良し、「越後縮」を発明します。やがて、この越後縮は平織の越後上布、縮織の小千谷縮という2種類の麻織物に分かれて発展しました。
これら2種類の麻織物は、苧麻(ちょま)と呼ばれる麻の一種で作られていること、また昔からの製法を守り続けてきたことにより、1955年に国の重要無形文化財、2009年にはユネスコの無形文化遺産に登録されています。
そして、この越後上布と小千谷縮の技術を取り入れて新たに作り出されたのが、小千谷紬でした。最初の頃の小千谷紬は自家用として、売り物にならない屑繭から糸を紡ぎ、作られていました。
しかし、江戸時代末期から明治初頭において飢饉が起こり、麻織物の原料となる苧麻が不足するようになると、小千谷縮から小千谷紬の製造へと仕事を変える人も増えました。
絹独特の美しさを楽しめる小千谷紬の特徴
小千谷紬の特徴は、なんといってもその生地の風合い。絹独特の光沢と肌触りのよさ、そして軽くて温かみのある生地が魅力です。
袖を通すと感じる、なめらかで暖かな着心地は、小千谷紬の唯一無二の特徴となっています。また、そうした着心地のよさに加え、着べりをしないという実用性も兼ね備えており、普段着としてもじゅうぶんにその機能を果たしてくれるのです。
そんな小千谷紬ですが、これを作るにはいくつもの工程があります。工程の最初は、まず糸を作るところから始まります。小千谷紬で使われるのは、「玉糸」と「真綿」から手で紡いだ糸です。
玉糸とは、1つの繭の中に2つのカイコの蛹が入った「玉繭」から採られた糸を指し、糸には特有の節があるので「節糸(ふしいと)」とも呼ばれます。
また、真綿とは、カイコの繭を引き伸ばして綿状にしたものです。この真綿を、指先で同じ太さになるようにていねいに引き出し、1本の糸として巻き取ります。
これらを手で紡いで作った糸は、経糸(たていと)と緯糸(ぬきいと)ごとに熱湯に浸け、洗浄します。糸ができたら次は染色に移ります。
染色には人工の化学染料を使うこともありますが、藍、草木染など昔ながらの自然由来の染料を使った染め糸も人気です。
まずは緯糸を張り、墨で印を付けていきます。この印は、織った時に美しい絣(かすり)模様ができるように付けるもので、正確さが要求されるものです。
糸の染め方は、「くびり絣」と「すりこみ絣」の2種類があります。くびり絣は、指を使って糸に染料を揉みこんでいく方法です。「すりこみ絣」は、ヘラに染料を付け、あらかじめ決められた図案に従って染料をすりこんでいく方法です。
自然染料で糸を染める際は、何日も繰り返して染め直すことで、次第に濃い色になっていきます。糸を染めたら、いよいよ織り機で布を織ります。あらかじめ織り機に経糸を仕込んでおき、模様が付けられた緯糸を織っていきます。
この時、緯糸を1本通すたびに、染色作業をする際に付けておいた印を合わせることによって、布に模様が織りだされていくのです。
そうして織っていき、できあがった布は、最後にぬるま湯で余分な糊を洗い落とし ます。乾燥させた後、砧(きぬた)打ちといって、平らな石の上に置いた布を木槌で打つことで、こわばった生地がほぐれ、真綿独特の風合いが出るようになるのです。
このように、小千谷紬一反を織るだけでも多くの工程を経ることになります。一つ一つ、職人の手でていねいに作られたものだからこそ、小千谷紬は唯一無二の美しさを誇るのです。
小千谷紬の現代での使われ方とお手入れ方法
絹特有の光沢と、真綿を使った温かみのある生地を持つ小千谷紬は、現代でも初夏から秋口にかけての着物に使われます。
絹を使っているので、ご家庭での洗濯を行うことはできません。汚れが目立ってきたら、クリーニング屋さんに持ち込めば、絹の風合いを損なうことなく、美しい小千谷紬が長い間楽しめます。
そんな小千谷紬ですが、現代ならではの課題も抱えています。現代では生活様式の変化により、着物を着る人がどんどん少なくなっています。そして、外国からも安い着物が大量に輸入されてくるようになりました。
その結果、小千谷市で作られた小千谷紬を購入する人が、年々減ってきています。更には、技術や仕事を受け継いでくれるような若手の職人も減りつつあります。
こうしたことへの対策として、小千谷市では、小千谷紬の技術や需要を絶やさないための努力が続けられているのです。
小千谷市にある小千谷織物同業協同組合では、小千谷紬の品質を高めるための技術研究が日夜行われており、新しい製品の開発にも意欲的に取り組んでいます。
研究の成果もあり、近年では、小千谷紬を使った洋服やネクタイ、日用品など、さまざまな製品が開発されるようになりました。このように、小千谷紬は今や、日常生活の一部としても、人々に受け入れられつつあるのです。
小千谷紬の見学・体験ができる場所
小千谷織物工房「織之座」ギャラリー
所在地 | 新潟県小千谷市城内1丁目8-25 |
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電話番号 | 0258-83-2329 |
定休日 | 水曜日 |
営業時間 | 10:00~17:00 |
HP | https://ojiya.or.jp/koubou/ |
備考 | 小千谷縮の技法についての説明や、織物の道具が展示されています。 |
小千谷織物工房「織之座」
所在地 | 新潟県小千谷市城内1丁目8-25 |
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電話番号 | 0258-83-2329 |
定休日 | 水曜日 |
営業時間 | 10:00~16:00 |
HP | https://ojiya.or.jp/koubou/ |
備考 | 【体験メニュー】コースター織 600円 かすり織 900円 リボン作り 900円 |