南木曽ろくろ細工とは
南木曽ろくろ細工(なぎそろくろざいく)とは、長野県にある南木曽町の周辺で作られている伝統工芸品です。質の良い天然木を使い、それぞれの木の木目を見てから何を作るのかを決めています。そのため、木目を活かした美しい作品ばかりで、どれを見ても木のぬくもりを感じられるのが特徴です。
作るものに合わせて木材を用意するのではなく、木を見てから何を作るか考える作り方は珍しいですよね。自然な木目を上手く作品に活かしています。
南木曽町やその周辺は森林が多く、昔から良い木材が取れていました。その木材を上手く活用するために、南木曽町では南木曽ろくろ細工のような工芸品が発達したとされています。
昔は最初から最後まですべて手作りされていたようですが、現在は機械も併用しながら作品を生み出している工房が多いです。
木で作る工芸品といってもタンスのような大型家具ではなく、茶碗やお盆のような小物が中心。手で持ったときに、それぞれの木の風合いがダイレクトに感じられますよ。また、1つ1つが異なる模様なので、世界に1つだけの作品を楽しめます。
「木地師の里」と呼ばれた地が発祥の南木曽ろくろ細工
南木曽ろくろ細工が作られるようになったのは、今から約300年前の1700年代前半の頃。当時から南木曽ろくろ細工のお盆やお椀などの工芸品が作られており、名古屋や大阪に運ばれていた記録が残っています。
南木曽ろくろ細工自体は1700年代前半から作られていたとされていますが、実は元となった木地ろくろ細工は1500年代から存在していたそうです。木地ろくろ細工を作っていた木地師と呼ばれる職人たちが、材料となる木を切るために使用した免状が残っていたため、存在が明らかになりました。
最初に木地ろくろ細工が作られたのは現在の滋賀県で、そこから全国へと技術が広まって南木曽にもろくろ細工が浸透。江戸時代には、白木と呼ばれる色を付けていない自然なままの木を使った工芸品が作られていた記録も残っています。
南木曽にろくろ細工の技術が広まると、徐々に木地師が集まり、「木地の里」と呼ばれる集落が完成。当時は、木を切るところから仕上げをするところまですべて細かな手作業で行われていました。しかし、最近ではすべて手作業で仕上げる職人は数少なくなっており、電動ろくろなどの機械を使用しながら、昔ながらの技術やテイストを残した作品が数多く生み出されています。
ろくろで木を削る南木曽ろくろ細工
南木曽ろくろ細工は、その名のとおりろくろを使って作る工芸品です。大きな木の板や丸太をろくろで削りながら形を整え、お椀やお盆などを作っていきます。そのため、木の板や丸太にある木目を見極め、削る向きや場所を決めていく必要があるのです。
ただ目的の形に削っていくのではなく、あくまでも木の質感に合わせて作品を仕上げていくのが大きな特徴。昔はろくろを手動で回して削っていましたが、現在では電動ろくろを使用して短時間で形が作れるようになりました。
ろくろの扱いは非常に難しく、南木曽ろくろ細工は限られた職人にしか作れません。そのため希少価値が高く、高値で取引されている作品も多く存在します。また、最初から最後まで一人の職人が行うのも特徴の1つです。
南木曽ろくろ細工は木の選定が非常に重要で、トチノキ・欅(けやき)・セン・カツラなどの原木を使用します。木を見てから作る作品を決めるため、原木を選ぶ作業を適当に行うと良い作品ができあがりません。
使う原木を決めたら、皮を剝がしたり汚れを落としたりしながら、木の表面だけでなく内部までしっかり観察します。切り口や表面を見れば、その木がどのように育ってきたかがわかるそうですよ。
木を観察しながら完成形を想像し、まずは荒挽きと呼ばれる工程を行います。ある程度形が整ったら、長時間乾燥させ、最後は自然の中で水分量を調整。長く使えるように自然の中に置いて仕上げるのも、南木曽ろくろ細工の特徴といえるでしょう。
乾燥が終わったら仕上げの削りを行い、最後にトクサ磨きもしくは漆拭きをして完成です。トクサ磨きはトクサと呼ばれる植物を使って研磨する方法で、漆拭きは漆を塗って拭きあげる方法です。仕上げを入念に行うことで、より美しい木目の南木曽ろくろ細工が完成します。
時代と共に変化する南木曽ろくろ細工の形と技法
南木曽ろくろ細工が作られ始めた頃は、便利な機械や道具がありませんでした。そのため、すべて手作業で時間をかけて作るのが一般的。しかし、現代では電動ろくろをはじめとしたさまざまな道具が普及しています。
機械を併用すると昔ながらの技術の高さがなくなると思う方も多いですが、実はそんなことはありません。機械を使いながらも手作りの良さは変わらず、職人たちの心のこもった作品が楽しめますよ。すべてが機械で作られているわけではなく、木の見極めや重要な工程は現在でも手作業で行われています。
また、時代の移り変わりによって、作られる作品の種類にも変化が生まれました。昔はお盆やお椀などが多かったものの、最近では使い勝手のよいパン皿や木製のコップなどが多く作られています。時代に合わせ、作るものを変えているのも長く継承されてきた理由の1つなのでしょう。
木で作られた工芸品は管理やお手入れが難しいと思われがちですが、南木曽ろくろ細工は難しいお手入れは必要ありません。電子レンジや食洗器は基本的に使えませんが、手洗いすれば普通の食器と同じように扱えます。柔らかいスポンジなどを使って、洗ったあとはしっかりと乾燥させてから収納しておきましょう。
南木曽ろくろ細工の見学・体験ができる場所
南木曽ろくろ工芸協同組合
所在地 | 長野県木曽郡南木曽町吾妻4689 |
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電話番号 | 0264-58-2434 |
定休日 | GWなど |
営業時間 | 11:00〜19:00 |
HP | https://kougeihin.jp/craft/0613/ |
備考 | 見学、オンラインショップなど |
カネキン小椋製盆所
所在地 | 長野県木曽郡南木曽町吾妻4689-108 |
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電話番号 | 0264-58-2021 |
定休日 | 無休 |
営業時間 | 8:00~17:00 |
HP | https://www.kanekin-ogura.jp/index.html |
備考 | 見学、製造直売など |