村山大島紬とは
村山大島紬とは、東京都武蔵村山市周辺で伝統的に作られている紬です。紬とは、玉繭から紡いだ絹糸を板締め染色という技法で染色し、手織りをするかすり模様の絹の布および仕立てた和服のことをいいます。作業工程は細分化すると40工程にもなり、全行程を解説するには多くの時間がかかります。
村山大島紬の定義は以下のとおりです。
1.伝統的な技術・技法をつかっていること
(1)先に染料で染めて、平織りにすること
(2)かすり糸を、たて糸、横糸につかうこと
(3)手作業で柄合わせし、かすり模様を織ること
2.かすり糸の染め方は「板締め」にすること
3.絹糸を使用すること
村山大島紬は図柄の精密さ、誰でも着こなせるような落ち着いた雰囲気をもち、しかも表裏がないという特徴があります。
村山大島紬の基本的な柄であるかすり模様の図案は、方眼紙に描きます。方眼紙をもとに板屋といわれる職人が水目桜の板に溝を掘り、かすり模様を織り出すかすり板を作ります。村山大島紬を作るのには、たて、よこあわせて150枚ほどのかすり板が必要です。現在はかすり板を作る職人がいなくなってしまったため、残った貴重な板を大事に使用しながら村山大島紬は作られ続けています。
絹糸の染色は、かすり板を使用します。絹糸を2枚の板で挟み、溝になっている部分に染料が入り込むことによって、その部分を染めるのです。染めむらを防ぐためにひしゃくで染料をかけたり、摺り込み捺染という技法で別の色を重ねたりして、絹糸を染めていきます。板の閉め方によって仕上がりが大きく違ってくるため、熟練の技が必要な作業です。
この染めの技術を確立することにより、大島紬と似た風合いでありながら、リーズナブルな着物を生産することに成功し、村山大島紬は一般に広まっていきました。
発祥から100年ー村山大島紬の歴史ー
現在の武蔵村山周辺は、江戸時代の頃、木綿のかすりの産地として有名でした。その中でも錦織の「村山紺かすり」と玉繭の絹糸を使った「砂川太織」が統合され、村山大島詰紬になっていったといわれています。
村山大島紬の生産は群馬県の方から板締めという染色技法が伝わったことがきっかけとなり、大正8年頃から盛んに生産されるようになりました。
戦後、村山織物工業協同組合が成立し、その後村山織物協同組合と改称しています。昭和28年には村山大島紬に共通の口織文字(大島紬の織口文字に相当)を制定してブランドの確立に努めました。
昭和42年3月には、その素晴らしい品質や丈夫さが高く評価され東京都指定技術工芸品の指定を受け、その生産の重要性が改めて認識されています。昭和50年2月に通商産業大臣指定伝統的工芸品として指定されました。
織物組合事務所は昭和3年に設立し、平成13年に武蔵村山指定有形文化財に指定されています。
新たな技法を取り入れ進化した村山大島紬
村山大島紬と大島紬は見た目や名前が似ていることからひとくくりにされがちですが、全くの別物です。大島紬は絹織物で着物の女王といわれるような高級絹織物として知られていますが、村山大島紬は安価な普及品として普段着に位置づけられています。
村山大島紬はその名が示すように、奄美大島の大島紬に対抗するように作られました。そのため奄美大島伝統模様の代表である「龍郷柄」によく似た幾何学文様が数多くみられます。
村山大島紬の魅力は、高級品だった大島紬を板締めの染色技法によって、庶民向けのお手頃価格で販売できるようにしたところです。大島紬が持つ利点の多くは村山大島紬に受け継がれています。
また、村山大島紬の最も大きな特徴は、着物と羽織が同じ柄である点です。戦後の経済成長期には、このアンサンブルに半幅帯を着るスタイルが大流行したといわれています。
現在の使われ方とお手入れ
村山大島紬は、羽織と着物のアンサンブルに半幅帯をしめて着るスタイルが流儀とされていました。村山大島紬は冠婚葬祭を除いたお洒落着や、お出かけ着として着ることができます。軽く着心地の良い紬は何世代にも渡り受け継がれています。
現在村山大島紬は着物以外にも、ネクタイやがま口財布、眼鏡ケース、バッグ、帽子、ベストなど様々な物に使われています。
村山大島紬は絹100%のためドライクリーニングを利用される方が多いですが、セルフメンテナンスも可能です。
セルフメンテナンスする場合は、着物を小さく4つ折りに畳んで洗濯ネットに入れ、ごく薄く洗剤をまぜた水(温度は人肌より低め)で軽く押し洗いします。
その後、よくすすいだら数十秒ほど洗濯機の弱脱水にかけます。脱水が終わったら着物をハンガーに掛けて、自然乾燥の生乾き状態でアイロンがけをおこなってください。裏からかけ、袖や衿などは表から薄い当て布をしながらかける方もいます。
また、現在のナノテクノロジーによりウォッシャブル加工を施しているものなど、自宅洗いがしやすいものも販売されています。
本来の村山大島紬は普通に洗濯をしてしまうと、裏地が縮むなどの問題がありますので、お手入れの際は十分に気をつけてください。
現在は着物以外の物も作られているため、表面を加工した生地も出ています。普段着用に作られた生地なので自宅で洗濯もできますが、あくまでも絹織物です。デリケートな生地であることをご理解のうえ扱うようにしてください。
村山大島紬の見学・体験ができる場所
村山織物協同組合
所在地 | 東京都武蔵村山市本町2丁目2番地の1 |
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電話番号 | 042-560-0031 |
定休日 | 土曜日、日曜日、祝日、年末年始 |
営業時間 | 9:30~16:00 |
HP | http://www.muraori.sakura.ne.jp/ |
備考 |
田房染織有限会社
所在地 | 東京都武蔵村山市三ツ木2-46-1 |
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電話番号 | 042-560-0116 |
定休日 | 不定休 |
営業時間 | 9:00~17:00 |
HP | https://tokyoteshigoto.tokyo/studio/tafusasensyoku |
備考 |