宮島細工とは
宮島細工(みやじまざいく)とは、広島県廿日市市(はつかいちし)宮島町でつくられている木工品です。瀬戸内海に浮かぶ宮島にある厳島神社(いつくしまじんじゃ)は、世界文化遺産に登録されており、日本三景のひとつでもあります。
厳島神社とともに発展してきた宮島細工は、木目の美しさがきわだち手ざわりがなめらかで、木材の質の良さや木工技術の高さがうかがえます。宮島彫りと呼ばれる写実的な彫刻は芸術的装飾品としても有名です。宮島細工は1982年に経済産業大臣より国の伝統的工芸品として指定されました。
厳島神社とともに発展した宮島細工の歴史
太古からうっそうとした木々にかこまれた宮島は、自然崇拝の対象として人々にあがめられてきました。霊験あらたかなこの地に社を建造したことが、厳島神社の始まりです。
平安時代、1146年に安芸の国(現広島)をおさめていた平清盛は、厳島神社を深く信仰し、この地に文化を移しました。平家一門は代々、この厳島神社を大切にしたのです。
その後、鎌倉時代には宮島に人々が移り住んで、この地を訪れる参拝客との交流が盛んになっていきました。また、厳島神社はたびたび火災にあい、何度も再建しています。そのたびに鎌倉や京都から宮大工や指物師が招かれて、島に木工技術がつたえられたともいわれています。
もともと木材の集積所だった宮島は、江戸時代に入ってからも、交易の中継地点として栄えました。しかし僧・誓真(せいしん)は、この島に代表する産業がなく、島民が貧しいことを案じていました。そこで宮島に古くからゆかりのある、弁財天が手にもっている琵琶の形からヒントを得て、杓子(しゃくし)を考案し土産品とすることに。上質な木でつくられた杓子は、製品としてすぐれていると評判になり、島民の生活は貧困から脱することができたのです。
江戸時代後期の1850年頃、さらなる技術の導入で、ろくろをつかった丸盆や茶たくなどの木製品がつくられるようになりました。彫刻師の波木井昇斎(はきい しょうさい)は宮島にたびたび立ち寄り、彫刻技術を伝授。宮島彫りと呼ばれる写実的な彫刻の美しさは評判となり、芸術性をもつ工芸品となりました。
ろくろの技術は、明治時代には手回しから足踏み式へ替わり、量産できるようになります。こうして幾度となく技術更新がおこなわれた宮島細工の技術は、1910年頃に最盛期となり、全国から300人近い職人が腕を競いにやってきました。
木地の美しさをいかした宮島細工の特徴
宮島細工の特徴は、派手な彩色をせず、あえて木目をきわだたせる技法です。古くから木をいつくしみ、大切にしてきた宮島では、なるべく1本の原木から無駄が出ないように、用途や寸法、できあがりを考えてノコギリを入れていきます。
杓子の原材料は、栃、クワ、ヒノキ、もみじ、ミヅメサクラなど。加工に入る前に、風通しのよい場所で1~2年じっくり乾燥させます。こうすることで変形や収縮を防ぎ、品質のよい杓子ができあがるのです。
杓子の製造工程は、最初に「顔」と呼ばれるごはんをのせる面を、かんなで横方向に削ります。次に別の種類のかんなで曲面を削り、中央をへこませます。刃をわざとつぶして切れないようにした刃物で顔全体を削り、紙やすりでなめらかに整えます。
「顔」の反対側は「背中」と呼びます。背中を縦に削り、杓子の先を薄く整える作業は熟練の技が必要です。次に小さな豆平かんなで削り、紙やすりでていねいに磨いていきます。
顔の次は柄の部分です。柄の裏面をかんなで削り、握りやすい形にします。そして先の部分の表面を手斧で削って、豆平かんなで面取りをします。最後に杓子全体を紙やすりで磨き、1日たってから乾いた布で拭いていきます。
杓子は木目に沿って割ってつくることで、ご飯に木のにおいが移らず米粒がつきにくいと評判です。
ほかにも、ろくろをつかって丸盆や茶たくなど丸い形の物をつくる「挽き物」、刃物をつかって四角の角盆をつくる「刳り物(くりもの)」、盆の表面やついたて、柱などに手彫りされる写実的な模様の彫刻「宮島彫り」があります。どれも本来ある木材の目の美しさや手ざわりを、見事に生かしてつくられています。
1400年つづいてきた宮島細工の現代とお手入れ方法
宮島細工は現代も、「杓子」「ろくろ細工」「宮島彫り」の伝承がつづいています。厳島神社には、受験シーズンになると大勢の受験生が押し寄せ、絵馬のかわりに杓子に願い事を書いて合格祈願をします。商売繁盛、家内安全、選挙、スポーツなど勝運をかけた縁起物としても、杓子は定番の縁起物となっています。木目や木肌をいかした盆や菓子器、茶道具などのろくろ細工、繊細で緻密な彫刻をほどこした宮島彫りも、伝統工芸士の手により今につたえられています。
宮島細工のお手入れ方法:米粒がつきにくいとはいえ、やはり木の杓子は使用する30分前くらいから水に浸しておくとよいでしょう。使用後は洗って、よく乾燥させることでカビなどが発生しにくくなります。そのほかの製品は、乾いた布で乾拭きをすると艶が増していきます。とくに肥松(こえまつ)と呼ばれる松の老木のヤニがまわった部分をつかった細工は、磨けば磨くほどあめ色に輝いていきます。
宮島細工の見学・体験ができる場所
宮島町伝統産業会館
所在地 | 広島県佐伯郡宮島町1165-9 |
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電話番号 | 0829-44-0008 |
定休日 | 月曜日(祝日の場合は翌日)、12/29~1/3 |
営業時間 | 8:30~17:00 |
HP | http://www.miyajimazaiku.com/ |
備考 | 備考しゃくし作り体験 400円 |
宮島のおみやげ処 ふなつき「船附商店」
所在地 | 広島県佐伯郡宮島町586 |
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電話番号 | 0829-44-0333 |
定休日 | 不定期 |
営業時間 | 9:30~17:30 |
HP | http://www.funatsuki.com/ |
備考 |