京念珠とは
京念珠(きょうねんじゅ)は、京都府で生産されている伝統的な数珠です。昔ながらの技術をしっかりと継承しながら、ひとつずつ丁寧に手作りされています。
玉の数は、煩悩(ぼんのう)と同じ108個。玉を糸でつなぐことによって完成する輪は、人の心が円く素直になる様子を表現したものです。
京念珠の歴史と京都が産地となった理由
念珠の正確な起源はわかっていませんが、3500年以上前の古代インドでは、すでに似たものが使われていたという説があります。それが、バラモン教の「ジャパ・マーラー」という道具です。ジャパ・マーラーは、現在使われている数珠の原型であり、仏教に取り入れられたことにより、中国へ伝わったとされています。
仏教で使われるようになってからは、個々の玉やその数に意味を持たせるようになりました。そして、仏教の広がりに合わせて、より多くの人が使うようになっていったのです。
念珠が日本に伝わった時期は、飛鳥時代。仏教とともに入ってきたことで、日本でも使われるようになります。ただ、当時の念珠はとても貴重でした。ごく一部の僧侶のみが使うものであり、あまり多くの人が触れるものではなかったと考えられています。その後、時代が移り変わっても念珠の生産は長く続けられ、日本での仏教の発展とともに少しずつ進化していきました。
京都で数珠の生産が盛んになった理由は、京都が日本の仏教の中心となっていたことです。京都には大きな宗派の本山も多く、地方から本山参拝にやってきた人たちを積極的に受け入れています。そのため、仏教の重要な道具である京念珠が京都で発達したのは、自然な流れでした。
また、材料の絹が豊富にあり、どんどん生産できたことも理由のひとつ。京都は絹織物の生産も活発に行われており、全国有数の産地となっています。上質な絹を大量に確保することは容易であり、高品質な数珠を作るには最適な環境だったのです。
そうした背景があったことから、京都では数珠作りが産業として根付いていきました。京都には老舗の数珠店が多く存在しており、多くの職人が精力的に活動しています。東本願寺(ひがしほんがんじ)の門前は「数珠屋町通り」と呼ばれており、特に多くの数珠店が集まる場所です。
京念珠は、熟練の職人が伝統的な製法で作る高品質な数珠として、現在も多くの人から愛されています。その品質を守るため、2007年には商標登録を取得しました。
手作りの技法を継承し続ける京念珠の特徴
京念珠の特徴は、昔ながらの技法を大切に守り、手作りにこだわっていることです。伝統的工芸品の中には、時代の変化に合わせて機械による作業を取り入れたものもありますが、京念珠の生産工程は基本的にすべて手作業。長年腕を磨いてきた職人が、高度な技術を用いて作り上げています。手作りならではの美しさや温もりを感じられる仕上がりが、多くの人を魅了する理由です。
仏教と深いかかわりを持つ京念珠は、宗派によって作り方が違うため、種類がとても豊富。主な種類だけに限定しても70以上あり、寸法や材質などが異なります。各宗派に合わせて細かく調整しながら作られているため、宗派ごとに最適な製品を購入できるのです。
また、耐久性の高さも特徴のひとつ。玉をひとつずつ丁寧に通し、慎重に編み込んでいく作業には、繊細な力の調整が必要です。練達の職人が微妙な強弱をつけながら編み上げていくと、丈夫な京念珠に仕上がります。そのため、簡単には劣化せず、長く愛用できる数珠として人気です。
紐や房に使われている素材は、絹と化学繊維の2種類。化学繊維の製品の方が、より丈夫で長持ちします。絹を用いた製品は、長く使っていると緩んだり切れたりすることがありますが、修理すればまた使うことが可能。紐が切れることには縁起が悪いイメージがありますが、「悪縁が切れた」という捉え方もあるため、絹の製品を直しながら使う人も多くいます。
初めて京念珠を選ぶ際に注目しておきたいのは、京念珠ブランドの製品であることを示すタグの有無。京都数珠製造卸協同組合に認められた高級ブランド品には、「京念珠」と刻まれたタグがあります。このタグは、組合に認められていない製品にはないもの。そのため、タグの有無を確認することにより、京念珠を正確に見分けることができます。
京念珠の現在とお手入れのコツ
京念珠は、現在も伝統的な手作りの手法が大切に守られており、昔ながらの品質の高い製品が人気を集めています。その一方で、時代に合わせた新しい製品も登場。京宝珠のブレスレットやストラップなどは、若い世代からも好評です。
優れた京念珠をより長く使っていくためには、日頃からしっかり手入れを行うようにしましょう。汚れがついた場合は、眼鏡拭きなどの柔らかい布で擦り、丁寧に落としてください。真珠や珊瑚を用いた製品は、汗や皮脂などの汚れで変色しやすくなります。きれいに汚れを取り除き、美しい見た目を維持しましょう。
ただし、水洗いは避けてください。糸が傷んでしまい、切れやすくなる恐れがあります。汚れが付着しても慌てて濡らさず、落ち着いて布で拭きとることが大切です。
保管の際は、購入時の箱や数珠掛けなどを活用し、なるべく房を伸ばしたままにしておきましょう。房が曲がったまま長く保管していると、癖がついてしまいます。癖がついてしまった場合は、お湯を沸かして蒸気に当て、優しく撫でるように直す方法がおすすめです。
京念珠の見学・体験ができる場所
今井半念珠店
所在地 | 京都府京都市東山区大黒町通正面南入(大仏耳塚) |
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電話番号 | 075-561-0307 |
定休日 | 要問い合わせ |
営業時間 | 要問い合わせ |
HP | http://imaihan-nenjyu.jp/ |
備考 | 京念珠の販売、体験コーナーあり |
かほりの店 明日香
所在地 | 京都府京都市下京区夷馬場町20-4 島原大門南へ(七条壬生川一筋西の道大門通りを北へ) |
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電話番号 | 075-371-2402 |
定休日 | 不定休 |
営業時間 | 9:00~17:00 |
HP | http://web.kyoto-inet.or.jp/people/aroma-a/ |
備考 | 京念珠の体験教室、販売あり |