ブランド
古式手すき和紙を暮らしの中へ
黒谷和紙協同組合
- 1996年
- 黒谷手すき和紙
- 林伸次 ほか
歴史
秘境で始まった暮らしを支える紙すき
黒谷和紙の産地である黒谷地区は、京都府綾部市と舞鶴市の境を流れる黒谷川沿いの集落です。
周囲を山々に囲まれ、冷たく清らかな川が流れるこの地は、良質の楮 (こうぞ) が自生する紙づくりに最適な場所です。
今から800年以上前、平家の隠れ里として村ができ、住民が生計を立てるために紙すきを始めたことが、黒谷の和紙づくりの始まりとされています。
平地が少なく、冬は極寒で農業には適さないため、紙すきが大切な生業でした。
古くは障子や傘など生活用品の紙をつくっていましたが、江戸時代には山家 (やまが) 藩の財政を支える重要な産業となり、次第に発展していきました。
より精巧な技術を修得するにつれ、京呉服に関連するたとう紙や値札、養蚕に使う繭 (まゆ) 袋などの需要が飛躍的に伸びます。
また、「日本一丈夫な紙」として国から認められ、携帯用の乾パン袋にも使われるようになりました。
その後、産業の機械化が進むにつれて、世の中の手仕事が急速に姿を消していきましたが、黒谷では昔ながらの手すきの技法で、今も和紙をつくり続けています。
特徴
熟練の技で美しく輝く和紙
黒谷和紙は、純手すきにこだわった希少な工芸品です。
良質な楮を原材料とし、清らかで豊かな水源で職人が一枚一枚丁寧につくり上げています。
黒谷川から引いた水は冷たく、とくに冬場の作業は過酷ですが、柔らかく煮た楮を清水の中で小さなチリまで丁寧に取り除くことで、格段に美しい和紙が出来上がります。
黒谷和紙の特長は、強くて破れにくく、長持ちすること。
長期保存に適しているため、提灯や傘、障子、包装紙などに活用されてきました。
世界遺産として登録された元離宮二条城の障子をはじめ、多くの文化財にも使用され、1983年には京都府無形文化財に指定されました。
また、海外からも黒谷和紙は評価が高く、フランスのルーブル美術館などで修復紙として使用されたほか、芸術家にも愛用されてきました。
黒谷和紙で制作された書籍「紙すき村 黒谷(中村元著)」は、1972年にドイツで開催された世界の図書展で「世界で最も美しい本」グランプリを受賞しました。
お客様へ
和紙に宿る想いを伝えたい
私たちは、長い歴史の中で育まれてきた黒谷和紙を、一人でも多くの方にお届けしたいと思っています。
京の都にほど近い自然豊かな里山で、一枚一枚丁寧につくられた本物の手すき和紙を、暮らしに役立てていただきたいのです。
この和紙には日本人の繊細な感性が宿り、人々のさまざまな想いが映し出されます。
その想いを100年先の未来に伝えるためには、美しいだけでなく、丈夫で長持ちする紙であることが必要です。
近年、安価な楮を仕入れて、機械で大量に生産することが一般的になっています。
それは、和紙を日常的に取り入れてもらうためには有効なのかもしれません。
しかし、原点に立ち返り、一歩一歩当たり前のことを積み重ねていくことこそが、誠実な紙をつくることにつながると言えるのではないでしょうか。
私たちは、紙すきの伝統とそこに込められた想いを、自信を持ってお届けします。
ぜひ手に取っていただければ幸いです。
受賞歴
1972年 世界の図書展「世界で最も美しい本」グランプリ受賞
1983年 京都府無形文化財に指定
2009年 日本の皇室より海外に送られるクリスマスカードとして選出