久米島紬とは
久米島紬(くめじまつむぎ)とは、沖縄県久米島町で作られている着物をいいます。
紬織物としての歴史が古く、現在も最高級品として名高いです。です詳細な製法の記録がしっかり残されていることから、発祥当時の雰囲気に限りなく近いのも特徴的。
また、作業工程の始まりから終わりまでを1人の職人がこなします。そのため、完成した久米島紬は職人ごとに微妙な違いが出てくるのも興味深いところです。
久米島紬の歴史~島民と共に生き続けた紬~
久米島紬のはじまりは、室町時代。堂之比屋(どうのひや)が当時の中国・明(みん)にて、養蚕(ようさん)の技術を得たことが起源です。
江戸時代になると、紬を税金として納めるようになります。しかし、久米島の支配者が琉球王国から薩摩藩へ変わると、状況は一転。税が重くなっていったことで、紬の質の向上が求められるようになりました。
そこで、琉球王府は越前から坂本普基(さかもとひろもと)を招待し、技術向上を図ります。薩摩の友寄景友(ともよせかげとも)から染色技術なども伝えられ、久米島の紬はより洗練されることに。
その後、久米島の紬は「琉球紬」として江戸に名をはせ、現代の「久米島紬」へと発展していったのです。
明治時代以降は、税金としてではなく、生活費をまかなうための生産品として久米島紬をつくるようになります。1900年代に入ると、より質の高い繭(まゆ)が導入されるなど、生産性向上に向けたさまざまな改良がなされました。
そして、大正時代には生産数4万反超えを達成。島民たちは紬の始祖への感謝の気持ちを表すように、堂乃比屋の石碑を建てたのです。
戦争や恐慌といった世界の荒波にのまれ、生産数が激減したこともありましたが、1950年頃から復興の取り組みを実施。2004年には国の重要無形文化財に指定され、今なお多くの人を魅了する紬として輝き続けています。
「最高級品」と名高い久米島紬の特徴
久米島紬の大きな特徴として、糸紡ぎ(いとつむぎ)から仕上げまでの全行程を、1人の職人が一貫して行う点が挙げられます。
柄の図案を作成するときには、首里王府がまとめた「御絵図帳(みえずちょう)」を参考。模様や染色方法が詳細に記録されているため、当時の雰囲気に限りなく近づけることが可能です。
また、染色は島内に自生する植物のみを使用。発色と定色を良くする「媒染(ばいせん)」で使う原料と、植物染料との組み合わせによって久米島紬の色が決まってきます。現在では、糸に淡いねずみ色の「ユウナ」や藍色を組み合わせることによって生まれる、淡い霞(かすみ)のような色合いも人気。
さらに、久米島紬には「最高級品」と言わしめる高級感も特徴的です。この高級感の秘密は、作業工程の最後に控える「砧打ち(きぬたうち)」にあります。
砧打ちは織り上がった反物を杵(きね)で叩き続ける作業。時間にして20分以上、回数にして何百回ともなる大変な作業です。この工程によって紬全体はなじみ、艶が出てきます。この艶こそが、久米島紬が醸し出す高級感に一役買っているのです。
また、糸を植物で染めることにより、微妙な色ムラが生じます。このような色ムラは、まるでさまざまな色を持つ「自然」そのものを表しているかのよう。そのため、出来上がった紬には細かい格子が見え、独特の高級感を演出しています。
ちなみに、久米島紬を織るとき、経糸(たていと)・緯糸(よこいと)共に紬糸を使用したものを「モロ」といいます。モロは非常に希少で、反物だけでも通常の3倍以上の価格。その分、より高級感のある上品な風合いを持っています。
久米島紬の着こなし方
最高級品として名高い久米島紬を着こなすためには、帯の選び方にも気を配りたいところ。
久米島紬は落ち着いた色合いが強いため、基本的には雰囲気を合わせた帯で十分です。しかし、それだけでは、見方によると「古臭い」と感じる方もいることでしょう。
そのような場合は、現代的で少し絵画的な模様があしらわれた帯がおすすめ。久米島紬の伝統的な雰囲気を残しながらも、おしゃれで優美な印象を与えます。
また、ユウナと藍色で染め上げた久米島紬は、全体的に銀灰色。そのため、帯には濃い地色の豪華なデザインがおすすめです。着物と帯が互いの質感をさらに高め、高級感漂うコーディネートを実現してくれます。
久米島紬を長く楽しむためには、部分的なしみ落としなどの日常的なお手入れが大切です。全体的に汚れた場合や長期保存をする前には、ドライクリーニングをしましょう。
また、久米島紬は繰り返し着たり洗ったりすることで、光沢感が増す特徴もあります。これは、染色時に使用されている植物染料などが、時間の経過と共に深みを増すためです。このように、久米島紬は着る度に少しずつ表情を変えるため、着物を着る機会が多い方には特におすすめです。
久米島紬の見学・体験ができる場所
久米島紬の里 ユイマール館・展示資料館
所在地 | 沖縄県島尻郡久米島町真社1878-1 |
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電話番号 | 0989-85-8333 |
定休日 | 旧盆、年末年始 |
営業時間 | 9:00~17:00 |
HP | https://www.kume-tumugi.com/ |
備考 | 【体験】コースターやバンダナ、ショールの織り・染め体験あり ※体験時間や費用は内容によって異なります |
久米島紬株式会社
所在地 | 沖縄県島尻郡久米島町字巨田501 |
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電話番号 | 098-985-2153 |
定休日 | |
営業時間 | |
HP | http://kouichi.co.jp/kumejima/ |
備考 | 販売のみ 見学については直接工房へ連絡ください |