勝山竹細工とは
勝山竹細工は、岡山県真庭(まにわ)市周辺、勝山地域に伝わる竹細工製品です。
「そうけ」または「そうき」と呼ばれる、竹製のざるやかごを主要製品としています。
かつては、穀物や野菜を入れたり、洗った米の水を切ったりと、生活に欠かせない必需品でした。
そうけには主に4種類、「大ぞうけ」「米あげぞうけ」「飯あげぞうけ」「みぞうけ」があります。
現代ではパンかごや花かごなど、おしゃれで時代に合わせた製品づくりでも注目されています。
国の伝統工芸品として認められるのは、縁の部分を地元で採れる「つづらふじ」という植物のつるで仕上げた製品のみです。縁を針金で仕上げたものは、工芸品の扱いとなります。
生活必需品であった勝山竹細工の歴史
勝山竹細工の主要製品である「そうけ」は、農作業や家庭での使用を目的に、長きにわたり実用品としての位置づけで作られてきました。
江戸時代の末期には製品が広く流通していたことが資料からわかっています。
勝山竹細工の関連製品の名前が登場する「山谷古文書」は江戸の末期にあたる1860年に書かれたとされているため、これが確認できる最古の起源です。
大ぞうけはその名の通り容量の大きなざるで、一升ほどの米、麦、雑穀をはかるためにつくられたものです。持ち運びにも便利で、穀物の計量用として大変重宝されていました。
一方、みぞうけは、野菜入れとして主に大根や芋、ごぼうなどを運ぶのに用いられていました。
江戸当時の家庭では、炊き上がったご飯が傷まないように「飯あげぞうけ」に入れ、軒先に吊るして保存していたそうです。
このように勝山竹細工の「そうけ」は台所用品としての需要が高く、家族構成によって容量の異なるものが作りわけられていました。
その後の明治初期の1877年に書かれたとされる酒屋の嘆願書にも、同様に勝山竹細工のそうけの名前が見られます。
幕末から明治へと移りゆく激動の時代においても、勝山竹細工の道具が人々の暮らしを支えていたのです。
その昔、家によっては竹細工の職人を家に招いて、そうけをまとめて作ってもらっていたとも伝えられています。数日間かけて、泊まって作業をしていた職人たちは、その家が使用する1年分の竹かごやざるを一気に編み上げたそうです。
丈夫で使い勝手の良い勝山竹細工は評判を呼び、じきに真庭周辺から中国地方全体へ、そして全国へと広まってゆきます。
その手仕事の確かな伝統が認められ、1979年に日本の伝統的工芸品として指定を受けました。
「竹割り3年、ひご取り5年」勝山竹細工の特徴
勝山竹細工は、産地である真庭市周辺で採れる真竹(まだけ)という種類の竹を材料に作られています。
他の竹細工の産地では、竹を煮沸したり火であぶるなどの加熱、または野にさらして自然乾燥させるなどの工程を行うこともありますが、勝山竹細工では無加工の青竹を使います。
天然そのままの竹を使用することで際立つのは、青竹の素朴な美しさ。
製品として完成した時にごまかしがきかないからこそ、その竹選びは重要です。
材料となれるのは、3年から5年ほどの成長を経た、艶、弾力も十分な最高品質の真竹のみ。
竹は時期により害虫の被害を受けやすいため、もっとも害の少ない11月から12月に、竹細工に使用する1年分の竹をまとめて切り出しています。
この、切り出した竹を必要な寸法に割る「竹割り」の習得に3年、そして材料にする竹を剥ぎ、より細い幅の「ひご」へと厚みを整える作業「ひご取り」の習得には、5年を要するともいわれています。
これが先人の言葉、「竹割り3年、ひご取り5年」の意味するところです。
編む工程が最も難しそうに思えますが、そこに至るまでにも職人の経験が問われます。
専用の鉈を用いて、竹ひごの幅や厚みを揃えるのは、完成品の艶にも影響する重要な工程です。経験なくしては、なかなか容易ではありません。
職人の手先の感覚のみによって現代まで受け継がれてきた、伝統の技法です。
勝山竹細工は、基本的にゴザ目編みという編み方で編み上げられます。
竹の外側の青い部分の竹ひご、内側の白い部分の竹ひごを交互に編み始めると、美しい縞模様が浮かび上がってきます。
シンプルながらしっかりと編み込まれたかごは型崩れしにくく、強度も抜群。
また、できあがったばかりの製品からは、甘く爽やかな真竹の香りがするのも素敵です。
そして竹細工製品には、使うにつれその色が深くなり艶が増してゆくという大きな魅力があります。
使い込まれた勝山竹細工の竹かごを見ますと、竹ひごの一本一本が美しい艶をたたえ、味わい深い飴色をしています。
勝山竹細工が年月を経てもまた楽しめる一品であることの体現といえるでしょう。
勝山竹細工の現代での使われ方とお手入れ方法
江戸の時代から令和の現代へと、脈々と受け継がれてきた手仕事から生まれる勝山竹細工。
現代では、パンかご、花かご、盛りかごや手提げかごなど、現代の生活スタイルに合った製品づくりが行われています。
そうけをパンかごとして現代風に製品化したものは大変人気があります。
焼き立てのパンを手編みの竹かごに入れれば食卓が華やぎ、朝食が楽しみになりそうです。
夏場にはお蕎麦やうどんを涼やかに盛ったり、果物や花を入れて飾ることもできますし、普段の生活にすぐに取り入れることができます。
水洗いすることができるのも、衛生的で便利です。ただし、濡れたまま湿気の多い場所に放置すると、かびが生えやすくなってしまいます。
洗った際には、水分をしっかり拭き取って、風通しの良い場所でよく乾燥させてください。
また、勝山竹細工はもともと、日々使うために生まれた「道具」。しまいこまずによく使ってあげることは、愛着へとつながります。製品を長持ちさせる秘訣の一つといえるでしょう。
また、勝山竹細工の材料である竹は、和にも洋にも違和感なく馴染むことから、あらためて良さが見直されています。
力強くも素朴な風合いと、竹が織りなす爽やかな青と白の縞模様は、竹かごのデザインにも最大限に生かされています。
実用品としての性能、耐久性はもちろん、その見た目の美しさも勝山竹細工の魅力です。
そして勝山竹細工の製作過程で出る竹の切れ端、使わなかった竹ひごなどは土に返る天然素材で、無駄がありません。
地元の真庭で採れる、竹という環境負荷のない持続可能な資源で伝統を守りながら作られています。
大切に使えば数世代は受け継いでゆけるほど丈夫です。
勝山竹細工は、強く、美しい。
そして環境意識の高まりを見せる現代にも合った、地球に優しい伝統工芸品です。
勝山竹細工の見学・体験ができる場所
真庭市役所 勝山振興局
所在地 | 岡山県真庭市勝山53‐1 |
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電話番号 | 0867‐44‐2927 |
定休日 | 土日祝、年末年始 |
営業時間 | 8:30~17:15 |
HP | https://www.maniwa.or.jp/web/?c=spot-2&pk=3110 |
備考 | 見学・体験については直接お問い合わせください。 |
平松竹細工店
所在地 | 岡山県真庭市勝山719−1 |
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電話番号 | 070-5671-1836 |
定休日 | 不定休 |
営業時間 | 不定期 |
HP | https://ja-jp.facebook.com/hiramatsutakezaiku/ |
備考 | 注:所在地には店舗はなく、体験はイベントや出張体験にて受付(予約制)。鍋敷きや四海波籠(しかいなみかご)のかご編み体験、竹割りひご取り体験など。料金の目安は2,000~3,000円程度。出張体験の相談は、随時受付中。直接お問い合わせください。 |