春日部桐箪笥とは
春日部桐簞笥(かすかべきりたんす)とは、埼玉県で作られている木工品です。
シンプルな外観ながらも洗練された印象がある春日部桐簞笥。質素ですが木の質感からあたたかみも感じられるタンスです。
春日部桐簞笥の起源は江戸時代。春日部周辺で採れる桐を使って指物(さしもの)や小物が作られ始めたのが始まりとされています。
桐は防湿性と難燃性に優れていることが特徴の木材です。湿気が多い季節でもタンスの中まで湿気が届かない性質を持っており、カビの原因ともなる湿気から衣服を守ることができます。
もし火災が起きても桐のタンスは燃えにくいので安心。 大事な着物をしまっておくには最適のタンスといえます。
江戸時代ごろから始まった春日部桐簞笥は現在、埼玉県さいたま市、春日部市、越谷市、白岡市を中心に作られています。材料の桐は東北各地のものです。
春日部にあった桐の木はほとんどなくなってしまいましたが、その当時の伝統と技術は今でも大切に守られています。
最近では扉や金具に美術的要素を加え、現代の和洋のインテリアに溶け込むようなデザインの春日部桐簞笥も人気となっています。
江戸時代に生まれた春日部桐簞笥
春日部桐簞笥の始まりは江戸時代の初期ごろ。日光東照宮の造営のために集まった職人たちが春日部周辺に住みつき、そこで採れる桐を使って小物を作り始めました。
大きい収納家具「車長持(くるまながもち)」も作られるようになり、そのうち春日部桐簞笥も作られるように。当初は農業の合間に作業がおこなわれており、 タンス作りを専門にしているところはありませんでした。
そんな状況が一変したのは1830年のことです。古利根川や江戸川から大消費地の江戸への輸送が可能になり、タンス作りを専門にした店が続々と増えていきました。江戸時代の中頃の文献からは10人ほどの業者が確認できています。
明治時代になるとさらに販路を広げ、大阪や広島、福岡にまで春日部桐簞笥が行き渡るようになります。こうして春日部桐簞笥は日本中に知られる家具となったのです。
昭和初期の1927年には組合を結成。品質向上のために基準を設け、その基準を満たした製品のみ出荷するようになりました。この基準はとても厳しかったため、反対する者も多かったようです。その後物品税もかけられるようになり、春日部桐簞笥は衰退の一途をたどります。
戦後には東京復興のため、東京の業者は戦火に遭わなかった春日部に職人や職場を求めました。それによって春日部の復興は早く進み、春日部桐簞笥の製造も復活したと考えられます。
そして1979年には春日部桐簞笥の伝統や技術が認められ、経済産業大臣による国の伝統的工芸品に指定されました。
昔は材料に春日部周辺の桐の木を使っていましたが、その数も減少。現在は福島県会津産のものを中心に、国産の質の良い桐を厳選して材料にしています。
そのようにして続けられてきた春日部桐簞笥は、今でも人々から愛される伝統工芸品です。
桐の良さが詰まった春日部桐簞笥の特徴
春日部桐簞笥の特徴は「防湿性」「難燃性」「軽量」。
春日部桐簞笥の材料である桐は、湿気を帯びると膨張する性質があります。膨張することで目が詰まり、乾燥すると収縮して元に戻ります。この性質のおかげで湿気がタンスの中に入ることはなく、湿気から衣服を守ることができるのです。
また、桐は燃えにくい性質も持っています。火災のときに水をかければ、膨張して隙間がなくなり火が入りません。中まで火が到達しにくいので、タンスが焦げることはあっても中の衣服は守られます。
桐はほかの木材と比べてたいへん軽い材料です。持ち運びが楽なうえ、引き出しの出し入れもスムーズにおこなえます。
そんな桐という木材でできた春日部桐簞笥。質素な外観ですが、そのぶん桐の直線的な美しい木目やあたたかみが感じられるデザインになっています。
春日部桐簞笥のお手入れ方法
春日部桐簞笥を長く使っていくためには日々のお手入れが大切です。
まず春日部桐簞笥を据え付ける場所は平らなところにしてください。少しでもゆがみがあると引き出しの具合が悪くなってしまいます。
また、桐は呼吸をしているため、タンスの裏側にも空気が流れるように5センチほど壁から離して設置するのが良いとされています。直射日光や冷暖房の風が当たらないようにすることも重要です。
ときどき表面を乾いた布で拭くようにすると、木目を美しく保つことができます。時間が経つと金具などがくもってくる場合もありますが、定期的な乾拭きによってそれも防げます。
春日部桐簞笥の産地・春日部周辺には修理を専門におこなっている業者が多くあります。もし引き出しが固くなってきたり汚れが目立ってきたりしたら、そういった専門の業者・職人へ相談するのがおすすめです。
春日部桐箪笥の見学・体験ができる場所
飯島箪笥製作所(埼玉県指定伝統工芸モデル工場)
所在地 | 埼玉県春日部市豊野町1-1-9 |
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電話番号 | 048-734-3922 |
定休日 | 年末年始、お盆 |
営業時間 | 8:00~12:00/13:00~17:30 |
HP | http://www.iijimakiritansu.com/ |
備考 | 予約をすれば、見学・体験などをおこなうことができます。春日部桐簞笥の購入もできます。掲載商品以外にも特注簞笥やメモリアル家具などの注文も受け付けています。 |
山田桐簞笥店
所在地 | 埼玉県春日部市小渕664 |
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電話番号 |
固定:048-752-2080 携帯:090-1939-8888 |
定休日 | 日曜日、祝日、お盆、年末年始 |
営業時間 | 9:00〜18:00 |
HP | https://y-kiritansu.com/ |
備考 | オリジナルの桐簞笥販売のほか、修理・再生を専門におこなっています。 |