加茂桐箪笥とは
加茂桐箪笥とは、新潟県加茂市や田上市で作られている桐箪笥です。絹のような優美な外観や滑らかな手触りはもちろん、見た目からは想像できないほど頑丈という特徴があります。
日本では婚礼家具としても愛され、親が娘を祝うあたたかな気持ちがこめられてきました。洗濯や修理によって新品同様に生まれ変わることから、「永久保証」として幾世代にも受け継がれる桐箪笥となっています。
加茂桐箪笥の歴史と大工の気まぐれ
加茂桐箪笥のはじまりは、江戸時代までさかのぼります。
1970年代、大工であった丸屋小右エ門が杉材で箪笥を作りはじめました。1810年代には桐材で箪笥を作りはじめ、今の加茂桐箪笥の元になったといわれています。
丸屋小右エ門が作った加茂桐箪笥は船積みされ、加茂川から信濃川へ。そして、新潟の各地や東北方面へと販路を伸ばしていきました。1877年に編纂された「加茂町誌資料」によると、明治時代には加茂桐箪笥が数百棹も製造・販売されていたと記されています。
その後も順調に販路を伸ばし、加茂桐箪笥は全国各地で求められるように。需要の高まりを受け、1949年には商工大臣から加茂町地区を重要木工集団地に指定されるまでになりました。1960年には全国優良家具展で「工業技術院賞」を受賞し、加茂桐箪笥は名実ともに日本を代表する桐箪笥になります。
生活様式の変化に伴い、桐箪笥の需要が停滞した時期があったものの、加茂桐箪笥の職人は伝統的な技術を守り続けました。職人たちが諦めずに高品質の加茂桐箪笥を作り続けた結果、桐材の持つ美しさや機能性は再度注目を集めることになります。
そして1976年、加茂桐箪笥はついに国の伝統的工芸品に指定されることになったのです。
「呼吸する家具」と呼ばれる加茂桐箪笥の特徴
加茂桐箪笥が持つ絹のような美しさは、原材料の桐材に大きく起因します。良質の桐を自然の天候にさらし、じっくりと乾燥させていくことで、桐材の渋みを徐々に出していくのです。その期間、なんと約3年。乾燥後の桐材は、ひとたびカンナを走らせるだけで、美しい白色が出てきます。
もう1つ、加茂桐箪笥の優美さに一役買っているのは、仕上げの工程。熟練した職人によって丁寧に、そして繊細な力加減で全体が整えられていきます。これにより、滑らかな手触りを実現しているのです。
また、引き出しの隙間は、薄い紙が1枚だけ挟まるほどの小ささといわれており、その気密性の高さは類を見ません。にもかかわらず、引き出しの開け閉めは楽で、使い勝手が非常に良い点も特徴的でしょう。この絶妙な隙間も、熟練した職人の手作業がなせる技であり、機械では決してかなうことがない精巧さです。
さらに、桐材は空気を層状に含んでいることから、熱が伝わりにくい性質を持っています。表面がこげて炭化してしまっても、中身まで熱が通らないのです。そのため、たとえ火事になっても、加茂桐箪笥の中に収納したものは炎に焼かれる心配がありません。
加茂桐箪笥の現代での使われ方とお手入れ方法
かつては「5つ揃え」といって、整理箪笥や洋服箪笥などと同じように、嫁入り道具として親から子へ贈られることが多かった加茂桐箪笥。時代の変化に伴って桐箪笥を贈る風習は少なくなったものの、代々受け継いだ桐箪笥を修理して娘や孫に贈る方もいます。
また、洋風の家でも使えるようなデザインの加茂桐箪笥が増えており、桐チェストなど現代風のデザインや小型化を図っている工房も。
さらには、加茂桐箪笥の桐材や技術を用いて、子供に優しいおもちゃを開発・販売する工房もあります。原材料は、加茂桐箪笥に使用した桐の端材。「3年もかけて乾燥させた桐材を、端材といえど捨てるのはもったいない!」という話から、有効活用すべく考えられたのが子供用のおもちゃでした。
加茂桐箪笥の端材で作られたおもちゃは無塗装のため、万が一子供が口に近づけたとしても安心です。このように、加茂桐箪笥は伝統を守りつつも、時代に合わせて新たなアイデアを生み出し、今なお発展し続けています。
お手入れ方法は、非常に簡単。普段は優しくほこりを払うだけで十分です。柔らかい布やはたきを使って綺麗にしていきましょう。
ただし、塗装されていない木部には触れないようにしてください。塗装が剥げやすい上、手垢が付きやすいためです。引き出しを開け閉めするときには、金具のみに触れるように注意しましょう。
「加茂桐箪笥を修理したい」「綺麗に生まれ変わらせたい」という場合は、購入元へ相談してみてください。桐材が割れたり欠けたりしている部分には、新しい桐材を追加し、全体をカンナで削り取る修理を行います。表面を少し削るだけで桐本来の白さが出てくるため、修理後は新品同様の美しさとなって返ってくることでしょう。
加茂桐箪笥の見学・体験ができる場所
公益社団法人 新潟県観光協会
所在地 | 新潟県新潟市中央区新光町4-1 |
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電話番号 | 0256-52-0445(加茂箪笥協同組合) |
定休日 | お問い合わせください |
営業時間 | 9:00~16:00(要相談) |
HP | https://niigata-kankou.or.jp/experience/15708 |
備考 | 加茂の伝統工芸 桐箪笥工場の見学 |
有限会社茂野タンス店 桐工房SHIGENO
所在地 | 新潟県南蒲原郡田上町原ケ崎新田30-1 |
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電話番号 | 0256-57-3610 |
定休日 | お問い合わせください |
営業時間 | 8:00~17:00 |
HP | https://www.kamono.com/ |
備考 | 桐木工教室あり |