甲冑とは
江戸甲冑(えどかっちゅう)とは、 端午の節句に飾る甲冑(兜・鎧)のことです。甲冑は製法や様式によって種類が分けられ、代表的なものには伝統技術を取り入れた江戸甲冑と京甲冑(きょうかっちゅう)の2つがあります。
甲冑の中でも重厚感のある江戸甲冑は、全身を弓矢から守るための防具である大鎧をモチーフに作られるのが一般的です。甲冑はこれまで、時代ごと用途や形が変わってきました。江戸甲冑はさまざまな時代の甲冑を参考に、江戸の人形師たちの手によって実物に近い形で作られたものだとされています。
江戸甲冑は数ある五月人形の中でも人気の高いもので、現代でも広く親しまれています。江戸甲冑の中にもいろいろな種類がありますが、どの甲冑も江戸らしい立派で力強い雰囲気を感じられるのが魅力的です。
端午の節句と深い関わりのある江戸甲冑
端午の節句は、約1000年前に中国から日本へと伝わった風習だといわれています。当初は現在のような形ではなく、息災を祈るための行事だったようです。男の子の成長を願い甲冑を飾るようになったのは、1600年代~1800年代頃からとされています。
【端午の節句の成り立ち】
「端」は「はじめ」を表し、「午」は数字の5と音が同じことから5日を端午の日にしたのが始まりです。現在では端午の節句といえば5月5日だけを指しますが、当時は奇数月の5日に行われていました。
男の子の節句として広まったのは、奈良時代頃に流鏑馬(やぶさめ)などが節会(せちえ)と呼ばれる宴会の恒例行事になった頃からとされています。端午の節句はその時期に盛りを迎える菖蒲(しょうぶ)から菖蒲の節句とも呼ばれ、武を重んじる尚武と同じ音から、武家の間で盛んに行われるようになりました。
その後は徐々に庶民の間にも広がり、華やかな鎧や人形を飾り男児の健やかな成長を祝う行事として浸透。1948年には「子供の日」として現代の国民の祝日に制定され、ますます盛んになりました。
【時代ごとの甲冑の変化】
鎌倉時代の末から室町時代にかけて作られた甲冑は奉納するのを目的としたものが多く、紐や柄が派手なものが主流でした。その後、馬に乗って戦うようになると、弓矢などから全身を守る大鎧が作られるようになりました。
武器が強くなるにつれ、より強固な甲冑が誕生。戦国時代には、鉄砲が実用化されそれに対応するための「当世具足(とうせいぐそく)」という甲冑が登場します。
江戸時代に入って徳川政権が始まると戦をする機会が少なくなり、身体を守る役目の鎧から工芸的技術を重要視するようになりました。派手な装飾などを施した甲冑が多くなり、身を守ることよりも見た目の恰好よさを求めるようになります。
幕末には槍や刀ではなく近代的な洋式の銃や大砲が使われるようになり、それらの武器に対応できる技術がなかったために、幕府の終わりとともに甲冑も役割を終えることとなりました。
重厚感のある江戸甲冑の特徴
p>甲冑には製法などの違いによりいくつかの種類があります。代表的なもので江戸甲冑・京甲冑の2つがあります。江戸甲冑は武家社会から生まれた甲冑で、これに対をなすのが貴族社会から生まれた京甲冑。派手な京甲冑と違い、江戸甲冑は武士の力強く重厚感のある雰囲気が特徴です。【江戸甲冑と京甲冑の違い】
江戸甲冑は実戦用をイメージした作りになっており、装飾要素の強い京甲冑に比べてシンプルな作りが特徴。しかし、シンプルだからこその洗練された魅力のある甲冑でもあります。
京甲冑は実戦をイメージした江戸甲冑とは異なり、金属や金箔などを使った派手な装飾を施しているのが大きな特徴です。身を守るのではなく、飾ることを目的としていた甲冑としても有名でしょう。
【兜飾りの特徴】
兜飾りの飾り方にはいろいろな種類があり、最もオーソドックスなのが平たい台に屛風を合わせ脇に太刀や弓を飾る平飾りや平台飾りと呼ばれるものです。ほかにはガラスやアクリルケースに入れたまま飾るケース飾りや、飾り台を収納箱として使える収納飾りなどがあります。
兜飾りはそれぞれ仕様に違いがあり、見て楽しむための「観賞兜」と被って楽しむ「着用兜」があります。観賞兜はあくまでも観賞するのが目的なので、サイズが少し小さく作られています。小さな子供なら頭が入るサイズではありますが、素材は金属を使っているので注意が必要です。
着用兜は着用するのが目的のため、サイズが大きく作られています。観賞兜より軽めの素材で作られているのも特徴です。
現代での使われ方とお手入れ方法
現代では、5月5日の子供の日に男の子の健やかな成長を祈り家に飾られています。兜飾りや鎧飾りは「体を守る」という意味合いが込められているそうです。
兜飾りや鎧飾りは金属でできているため、湿気が大敵。湿気があると金属に湿気がついてサビの原因に。ほかの部分にもカビが生えることもあります。子供の日が終わったら梅雨に入る前になるべく早くしまいましょう。
また、しまう際にも手袋などをして江戸甲冑に手の油がつかないようにするのが良いでしょう。油がつくと黒く変色する原因になるので、油がついてしまったら柔らかい布で拭き取ってください。
保管する際は、防虫剤や乾燥材が江戸甲冑に直接触れないようにし、虫食いや湿気を防ぎましょう。もし部品が壊れてしまった場合は、修理をしているところがあるので活用してみてください。
甲冑の見学・体験ができる場所
江戸東京博物館
所在地 | 東京都墨田区横網1-4-1 |
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電話番号 | 03-3626-9974 |
定休日 | 月曜日、年末年始 |
営業時間 | 9:30~17:30(入館は17:00まで) |
HP | https://www.edo-tokyo-museum.or.jp/ |
備考 | 甲冑の着用体験、見学など |
忠保 株式会社大越忠製作所
所在地 | 埼玉県越谷市神明町1-39 -2 |
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電話番号 | 048-962-1166 |
定休日 | 不定休 |
営業時間 | お問い合わせください |
HP | https://tadayasu.co.jp/ |
備考 | 工房見学、購入、オンラインストア |