出石焼とは
出石焼(いずしやき)とは、兵庫県豊岡市出石町一体で焼かれる磁器のこと。出石白磁(いずしはくじ)とも呼ばれ、1980年3月には、通商産業大臣(現・経済産業大臣)によって国の伝統的工芸品に指定されました。
日本国内ではめずらしい白磁:出石焼に使われるのは、柿谷陶石(かきたにとうせき)という純白の岩石。鉄分含有量が極めて少なく、白色度が非常に高い良質な陶土には、石英や絹雲母が含まれます。ここからは、出石焼がつくられる工程とともに解説します。
柿谷陶石をすりつぶし、練り固めてできる粘り気ある磁土を1~2時間かけて良く練り、空気を抜いてから、ろくろにて成形。20日から1ヶ月かけて乾燥させます。その後ノミなどで削る『浮き彫り』や模様を素材に貼り付ける『貼花』などの技法で装飾(素地加飾)するのが一般的です。
800~900度で12~20時間ほどかけて焼き上げ、窯から出さずそのまま2日かけて冷まします。3日目に出したのち、下絵付けのあとで釉薬をかけ、1250~1300度で本焼き。さらに2日かけて冷まし、3日目に取り出して完成です。
手間暇かけて丁寧につくられる出石焼は、伝統的な純白を追求したもの、個性的で繊細な絵付けをほどこしたものなど、窯元それぞれに個性の違う作品があり、いろいろな表情が楽しめます。
土焼から石焼へ|多くの困難を乗り越えつつも大切に守られた出石焼の歴史
出石焼は、1764年に泉屋治郎兵衛(いずみやじろべえ)と伊豆屋弥左衛門(いずややざえもん)という人が但馬(たじま)出石郡細見村桜尾(現・兵庫県豊岡市出石町)で土焼(つちやき)窯を始めたのが起源。つまり、出石焼の始まりは磁器ではなく陶器だったのです。
残念ながら泉屋治郎兵衛は土焼の試焼中に病死しますが、1784年には伊豆屋弥左衛門が窯を運営し、それが出石町における窯業の始まりとなりました。その4年後、出石藩の援助を受けた二八屋弥左衛門が九州有田で磁器技法を学び、陶職人・兵左衛門を連れ帰ります。
そこで石焼を計画したものの、準備不足や経営不振などの影響でうまくいかず、兵左衛門はいったん出石を離れることに。その後しばらくして、他地域からの陶土を手にした兵左衛門が出石に戻り、1793年伊豆屋窯にて磁器焼成を果たしました。
江戸中期1799年には、伊豆町柿谷の出石城下などでで白磁原料となる陶石が大量に発見され、本格的な磁器生産を開始。出石藩は白磁を出石の特産物にしようと、伊万里焼の陶士に頼んで来てもらい、伊万里焼にならった染付、赤絵など色物磁器の生産も始めたのです。
江戸の天保期(1830~1844年ごろ)になると、出石焼には藩窯(はんよう)だけでなく民窯(みんよう)も興り、激しい興亡※がありました。厳しい時期がありましたが、その伝統は廃れることなく、今も大切に引き継がれています。
1980年3月には、通商産業大臣(現・経済産業大臣)によって国の伝統的工芸品に指定されました。
※興ったり廃れたりすること
清楚な白さ・美しい彫刻・白に映える絵付けなど多彩な出石焼の特徴
出石焼の特徴でまず目を惹くのは、透き通るように美しい『唯一無二の白さ』です。伊万里焼などの少し青みを帯びながらも温かみのある白さとは違い、『冷たさを感じさせるほどに白い』のです。
そこには、艶やかで気品あふれるシルキーな肌触りをふくめ、神秘的にすら感じられる凛としたオーラが漂っています。使われる釉薬には、ツヤのある『透明釉』とツヤ消しマットな『結晶釉(けっしょうゆう)』があり、同じ白磁でも違った味わいが生まれるのです。
また、出石焼には『個性的な彫刻』がほどこされているものが多く、緻密な彫刻技術によって生まれる立体的な模様は圧巻。彫刻部分は見る角度によって変わる表情も楽しめます。
さらに色釉薬を使ったものや、白地に映える絵付けをして模様を描いたものもあり、青色には呉須(ごす)、赤色には釉裏工(ゆうりこう)などが使われます。近年は日常生活にも溶け込みやすいおしゃれなデザインのものも人気です。
出石名物『出石蕎麦』で出石焼きを美味しく楽しもう
出石の名物である出石蕎麦は、1706年に信州上田城から国替えしてきた仙石のお殿様(仙石政明)が蕎麦職人とともに出石に来て、蕎麦を広めたのがきっかけといわれています。
そのとき出石焼の白い器と出会い、蕎麦用の”せいろ”ではなく、直径10センチほどの手塩皿(てしょうざら)に蕎麦を盛る『皿蕎麦』として提供し始めたのです。
皿蕎麦にすると持ち運びしやすく、蕎麦の屋台売りの際にも便利だったからという説もあり、5枚1組を1人前として何枚も食べるのがスタンダード。出石では『箸を立てた高さを食べると一人前 の成人男性』ともいわれているとか。
徳利に入ったつゆはカツオや昆布のダシが効いています。特徴的なのは玉子・とろろ・ねぎ・大根おろし・わさびというバラエティに富んだ薬味のラインナップ。
そんな出石蕎麦には『お節介食べ方指南』なるものがあります。まずつゆを味わい、次に大根おろしを入れたつゆで蕎麦を味わう。続いてネギとワサビを入れて楽しみ、次は山芋と卵を入れて食す。最後は残った蕎麦つゆに蕎麦湯を入れて飲む、というもの。
出石焼窯元での見学や体験、ショッピングを楽しんだ後にぜひ、出石蕎麦を堪能してみてください。
出石焼の見学・体験ができる場所
永澤兄弟製陶所
所在地 | 兵庫県豊岡市出石町内町92-1 |
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電話番号 | 0796-52-2155 |
定休日 | 年末年始のみ |
営業時間 | 10:00~16:00 |
HP | http://www.izushiyaki-nagasawa.com/taiken/ |
備考 |
絵付け体験:1,500円~ 。湯呑、小皿、花入れ、抹茶茶碗 |
出石焼 虹洋陶苑
所在地 | 所在地 兵庫県豊岡市出石町八木57 |
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電話番号 | 096-52-5945 |
定休日 | 不定休 |
営業時間 | 10:00~17:00 |
HP | http://kouyoutouen.com/pg24.html |
備考 |
絵付け体験:1,650円~。湯呑、風鈴、蕎麦皿、蕎麦猪口 |