伊勢崎絣とは
伊勢崎絣(いせさきがすり)は群馬県伊勢崎市周辺で生産される平織物をいいます。
種類豊富な絣技法はすべて手作業でなされ、高度な技術を要することから経済産業大臣指定の伝統的工芸品にも指定されています。
1200年以上の歴史を誇る伊勢崎絣の歴史
伊勢崎絣の歴史は1200年以上にも渡るといわれています。元々群馬県伊勢崎市、およびその近郊は養蚕業が盛んなこともあり、織物の産業が発展しました。
江戸時代に入ると、伊勢崎絣の原型とも言える伊勢崎縞(いせさきしま)や伊勢崎太織(いせさきふとり)などが現群馬県の特産品として広く知れ渡ります。
素朴でありながらお洒落な絣模様や縞模様が人気を博し、伊勢崎織物は次第に有名になりました。
明治期には、機械織りも導入され、一気に生産量を増やしていきます。
しかし、洋装が流行し着物が廃れ始めると伊勢崎絣の人気も陰っていきました。そこに戦争が追い打ちをかけ、伊勢崎絣の伝統すら失われかねない自体を迎えます。
多彩な絣技術は後世に残さなければいけないという伊勢崎の人の必死な想いが身を結び、細々ながら伊勢崎絣は作り続けられました。
今では反物のみならず日用品などにも応用されるなど、現代社会で伊勢崎絣の伝統が生き残れる道が日々模索されています。
多種多様な絣技法を持つ伊勢崎絣の特徴とは
伊勢崎絣の特徴は染色技法にあります。
染色技法の違いによって絣名も異なり、代表的なものに「括り絣(くくりかすり)」、「板締め絣(いたじめかすり)」、「型紙捺染加工絣(かたがみなっせんかこうかすり)」などがあります。
もっとも一般的なものは括り絣ですが、その製作工程は10を超えます。
作業工程の中でも特に注目すべき工程は「摺込み捺染(すりこみなっせん)」と「締括(しばり)」です。
摺込み捺染は模様の目印となる場所に、捺染棒と呼ばれるものを用いて糸の芯まで色を染み込ませる作業を言います。
締括は、摺込み捺染で色を付けたところ以外に染色する作業です。摺込み捺染で染色した部分に色がかかると大変なので、摺込み捺染部分にはテープを巻き染色しないようにします。
締括は大変時間がかかり、かつ繊細な作業なので、昔は家族総出で作業したと言われています。その光景は伊勢崎市でも大変有名で、その光景を見に観光客が集まったとすらいわれています。
摺込み捺染、締括の作業で糸に色付けがなされるわけですが、細かく色分けされるため、絣ものにしては色彩が豊かに仕上がるというわけです。
ちなみに、この括り絣では一般的な絣模様しか表現できませんが、曲線の絣模様を表現する技法もあり、これは伊勢崎絣の特徴の一つにもなっています。
曲線を表現するために用いられるのが型紙で、糸に型紙を使用しながら捺染加工することで曲線模様を作り出しています。
曲線模様の絣は総じて「型紙捺染加工絣」と呼ばれていますが、経糸に型紙を用いるのか、緯糸に型紙を用いるのかによって名称が異なります。
経糸に型紙を用いるものを解模様絣、緯糸に型紙を用いるものを緯総絣、経糸にも緯糸にも型紙を用いるものを併用絣と呼んでいます。
糸の染色方法だけでこれだけたくさんの絣模様が生み出されるというのは、他では類を見ません。
伊勢崎絣は工程が多いだけではなく、各工程に様々なやり方が派生することから分業化が進んでいるのも特徴的と言えるでしょう。
多くの伝統的工芸品では職人が一貫して一つの作品を作ることが多い中、あえて分業制を推進しているというのは大変珍しいです。
反物だけではない!日用品にも応用される伊勢崎絣
江戸時代に比べ、現代の日本では着物が着られることは大変少なくなりました。
特に、江戸時代や明治時代に普段着として親しまれた紬や絣は今ではよそゆき着に格上げされ、さらに伝統的工芸品というブランドまでついたものは超高級品になりつつあります。
伊勢崎絣がまさにその道を歩んできています。
いつまでも反物にこだわっていると後世の育成も難しく、伝統が廃れてしまうと危惧した伊勢崎絣職人たちは、伊勢崎絣の丈夫さとお洒落さに注目し、現代社会でも使える品に加工し始めました。
そして生まれたのが、伊勢崎絣ネクタイ、伊勢崎絣テーブルクロス、伊勢崎絣のれんなどです。
現代のニーズに合わせつつ、しかし伝統技法はそのままに活かした品は再び伊勢崎絣の名を有名にしました。
反物ももちろん作られていますが、鮮やかな色合いでバリエーションに富んだ絣柄が織り込まれたテーブルクロスなどは日本土産にも最適だと大変人気です。
伊勢崎絣は、現代人のニーズに応える道を模索しつつ、貴重な伝統技法を後世に残すべく、日々精進しているのです。
伊勢崎絣の見学・体験ができる場所
伊勢崎織物会館
所在地 | 群馬県伊勢崎市曲輪町31-1 |
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電話番号 | 0270-27-2759 |
定休日 | 土曜日、日曜日、祝日 |
営業時間 | 9:00~16:00 |
HP | https://www.city.isesaki.lg.jp/soshiki/keizai/bunka/kankou/gyoji/6109.html |
備考 | 見学は休館日以外可能ですが、事前に予約を入れておいた方がスムーズです。体験は期間限定で行っています。 |
かすり工房さいとう
所在地 | 群馬県伊勢崎市今泉町1丁目1393-3 |
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電話番号 | 0270-25-1148 |
定休日 | 特になし |
営業時間 | 9:00頃から(個人工房なので、見学時間はこちらの都合に合わせていただけることが多いようです。夜18:00以降でも相談すれば可能) |
HP | http://iga.justhpbs.jp/saitou.html |
備考 | 全行程見学可能ですが事前予約は必要です。 |