
ブランド
土の代わりの植木鉢という哲学
市野伝市窯
- 丹波立杭焼
- 市野弘通

歴史
800年続く丹波立杭焼
市野伝市窯は、兵庫県丹波篠山市で三代続く植木鉢専門の窯元です。
丹波篠山の立杭地区で作られる焼き物は丹波立杭焼(たんばたちくいやき)と呼ばれ、日本六古窯の一つに数えられています。
この地域は山々に囲まれた盆地で、秋冬には幻想的な霧が立ち込めることで知られています。
霧が晴れると乾燥が早く、陶芸に適した土地でもあります。
丹波立杭焼の起源は平安時代末期から鎌倉時代まで遡り、800年以上の歴史を有します。
当初は山腹に溝を掘り、穴窯を築いて庶民に求められる焼き物を作っていました。
登り窯が導入されると一度に大量の陶器を焼くことができるようになり、その後も蹴りロクロの発明、灰釉や鉄釉の使用、新しい釉薬の開発、土質の改良など、大きな進歩を遂げてきました。
問屋を置かずに作った物を直接販売するスタイルは、現在まで引き継がれています。
1960年代には、素朴で独特の風合いを持つ丹波立杭焼が民藝運動家・柳宗悦氏の目に留まり、民藝品としての「用の美」を追求することに。
生活の中にある雑器が、新しい美の価値を生み出すきっかけとなったのです。
特徴
草花の個性を尊重する器
市野伝市窯は植木鉢に特化した窯元で、丹波立杭焼の中でも唯一無二の存在です。
創業者の市野伝市は、古くから日用品のほか菊や朝顔など季節を彩る花々の植木鉢を製作、根っこが腐らないように通気性や水はけを良くしたり、保水性を高める工夫をしたりと独自の研究を重ねていました。
そして今から50年前、山野草の愛好家から専用鉢の制作を依頼されました。
土の配合から形状、厚みに至るまで徹底的に話し合い、試行錯誤の末、山野草に最適な植木鉢が完成。
以来、クリスマスローズの専用鉢や、特殊な植木鉢の別注も受けるようになりました。
伝市鉢の大きな特徴は、植物の種類によって異なる土の配合、根が呼吸しやすい形、熱を遮断し鉢自体が保水できる厚みです。
土、形、大きさ、底穴の開け方などすべてにこだわりを持ち、植物が美しく健やかに育つように考え抜いています。
穴窯や登り窯が現在でも使用できるという利点がある為、ガス窯と合わせて3種類の窯を使い分けながら製作。
窯の性質、薪の種類や焼ベ方による焼き上がりの違いを楽しむこともできます。
初代から蓄積された知識と知恵は、二代目・達也から三代目へと相伝されています。
サラリーマンを経て家業の希少価値に気づき、基礎から徹底的に学び直した三代目・弘通は、匠の技の習得に励みながら、形を変えずに自分流を築く模索をしています。

お客様へ
自然との共生を感じて
市野伝市窯の植木鉢には、最後に「伝」という落款を刻んでいます。
それは、植物のことをとことん考えて創り上げた匠の技に対する自信と誇りの表れです。
土肌の素朴な風合い、繊細な手仕事により生み出される美しい色や文様、そして何より植物が生き生きと育つ土壌としての植木鉢。
土の配合、形、釉薬の色、焼成する窯など、さまざまな条件によって変化が生まれる鉢は、想像を超えるような出来上がりが待っています。
ぜひ一度、伝市鉢を日々の暮らしに取り入れて、生命力あふれる植物に囲まれた潤いと癒しの空間を感じていただければ幸いです。
引越し祝いや新生活の贈り物にもおすすめいたします。