南風原花織とは
南風原花織(はえばるはなおり)は、沖縄県島尻郡南風原町でつくられている織物。
南風原町には、かすりロードと呼ばれる風情ある街並みがあり、あちこちから機織り機の音が聞こえてきます。琉球絣(りゅうきゅうかすり)をルーツに持つ「南風原花織」です。
琉球絣は、縦横1本ずつの糸を交互に織る平織ですが、南風原花織は糸を2~3本とばして織り、綜絖を8~10枚使うため立体的な図柄ができ上がります。
この図柄を浮き上がらせる織り方(浮織)により、浮糸部分は刺繍をしたかのように華やかに光輝きます。
琉球絣の継承と花織への発展
絣織物の歴史は古くからあり、7世紀頃にインドのアジャンタ洞窟の壁画に絣織物らしき布が描かれています。その後、世界中へ広まる際にアジアではそれぞれの地域独自の柄が生まれていきました。14世紀~15世紀には沖縄に伝えられたといわれています。
絣は琉球王府時代に祝い着として献上されていました。その図案は600種類を超え、雲を模した丸を5つ織っているイチチマルグムーや、空を飛ぶ2羽の鳥を表現したトウイグワーなど独特のもので、「御絵図帳(みえずちょう)」をもとに緻密に計算して織られていました。先に染めてから織りあげるのが特徴ですが、この染め方や織り方によりかすれたようになることから、「かすり」と呼ばれています。
南風原町は当時から絣の生産地でしたが、那覇の小禄、泊などほかの生産地との交流に影響されながらより高度な技術で織る花織へと発展していきました。
明治時代には母から娘へ伝え継がれ、明治後期には出征軍人が花織の手拭いを帰国後も使っていたという記録が残っています。1914年4月に設立された南風原村立好補修学校でより多くの織り子が誕生し織物の生産地として名をはせました。
昭和に入り、沖縄戦が始まると産業は危機的状況下にありましたが、戦後間もない1949年には、技術衰退を危惧した人たちが米軍の軍製品や船舶用のロープなどを糸にして材料をかき集め、伝承を続けてきました。
1972年、本土復帰すると沖縄の工芸品が全国へ広く認知され、1978年に大城カメさん、1989年に大城廣四郎さんが前代の名工に選出。2017年1月には国の伝統的工芸品に指定されました。
南風原花織の豊富な織り方
南風原花織には織り方によりさまざまな種類があり、ほかの絣同様、裏表のない「両面浮花織」が多いです。中でも、以下の4種は南風原ならではの名称が付けられています。
1 タッチリー:縦縞模様の織物ですが、経糸(たていと)が途中で断ち切れているように緯糸(よこいと)を織る柄。
2 喜屋武八枚:明治時代の中頃、喜屋武の村にいた美しい姉妹が嫁ぎ先で8枚の綜絖を使いオリジナルの花織を織ったことが由来。喜屋武は妹の嫁ぎ先。
3 照屋八枚:喜屋武の村にいた美しい姉妹の姉が隣町へ嫁ぎ後世へ伝えた織り方。戦後、照屋八枚の織り手がいなくなり技術が途絶えるが、2000年に有志が復元し現在も織られています。
4 南風原 道屯(ロートン)織:経糸が浮く織り方で、緯糸を数本まとめて経糸で被せ曲線柄を織っています。 また、両面浮花織のほかにも、獅子舞が躍る様を沖縄でクワァンクワァンと呼ぶように、裏地に遊びの糸を織る「クワァンクワァン織」や色違いの経糸を織りこみ細い縞模様を作る「ヤシラミ花織」、穴を作りそこに模様となる色糸を差し織る「チップガサー」など多くの種類があります。
南風原花織の豊富な織り方を際立てているのが染色。染色には自然素材のものが多く使われており、県内固有の琉球藍、黄色の染色材である福木、茶色に染まるテカチ染めなどの植物染料で色鮮やかに染めています。自然素材の染料だけでなく、化学染料も使うことによりさらに豊かな色使いが可能になりました。
現代での南風原花織の使われ方
南風原花織の多くは、鮮やかな色彩を生かし反物として流通しています。
民芸的でありながら、モダンな雰囲気を感じさせる南風原花織の反物は、フォーマルからカジュアルまで、場所を選ばずにさまざまなシーンで着用することができます。
着物好きの方々の間で南風原花織が支持されている理由の一つとして、手織りであることが挙げられます。そのしなやかで光輝く立体的な模様は、大量生産の機械では再現できない熟練の経験によるもの。
また南風原花織は、染料の素材や染め方、使う糸によって1つ一つ違う色に仕上がり、世界でただ一つの着物ができ上がります。時代に合わせてデザインや色味を常に進化させてきた織りの技術は、南風原花織が発展してきた歴史そのもの。
反物だけではなく、帯もまた人気のある一品です。
帯の中でも名古屋帯は外出着として合わせやすく、反物と帯の組み合わせによって、ワントーンや柄を強調する着方を楽しめます。
ほかにもネクタイやバッグ、マスクなどを販売しています。また、南風原町のふるさと納税の返礼品としても取り扱われています。
南風原花織の見学・体験ができる場所
琉球絣事業協同組合
所在地 | 沖縄県島尻郡南風原町本部157 |
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電話番号 | 098-889-1634 |
定休日 | 日曜日、祝日(年末年始、旧盆) |
営業時間 | 9:00~17:00(閉館)17:30 |
HP | http://ryukyukasuri.com/ |
備考 | かすりロードにあるこちらの会館では、機織り風景の見学が無料でできます。事前予約制で機織りの体験も可能。 |
丸正織物工房
所在地 | 沖縄県島尻郡南風原町字本部31番地 |
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電話番号 | 098-987-0446 |
定休日 | 土日祝 |
営業時間 | |
HP | https://marumasa-orimono.com/ |
備考 | かすりロードで家族三代続く工房。自宅兼工房なので、見学の際にはお問い合わせを。琉球絣のネット販売も行っています。 |