越前焼とは
越前焼(えちぜんやき)とは、福井県にある越前町を中心に作られている焼物です。数ある焼物の中でも特にシンプルで、表面が朱色や赤黒い見た目をしています。越前焼には鉄分の多い土が使われているため、焼くことで赤黒っぽく仕上がるのです。水漏れしにくいことから、水や酒を入れる壺や容器としても重宝されています。
また越前焼は、備前焼・信楽焼・常滑焼・瀬戸焼・丹波焼と並ぶ日本六古窯のひとつとしても有名です。古くから福井県で作られていた越前焼は、なんと平安時代から作られています。多くの古窯が作られていた越前焼ですが、時代の変化とともに製造数は減ってしまいました。
しかし、最近では古くから受け継がれてきた技術や美しさが再評価され、新しい職人たちによってさまざまな作品が生み出されています。越前で採れる土の特徴を活かしながら、日々たくさんの越前焼が作られているそうです。
昔ながらの素朴でシンプルな風合いの作品はもちろん、若い職人たちによって作られる新たな越前焼も注目されています。2017年4月28日には、日本六古窯が日本遺産に認定されたことで一気に知名度も上がりました。
古い歴史を持つ越前焼の発祥は平安時代
日本六古窯のひとつである越前焼の歴史は古く、今から800年以上前の平安時代にまでさかのぼります。越前焼が日本で作られるようになった当初は、穴窯と呼ばれる山の斜面をトンネル状に掘った穴を使って焼き上げていました。
室町時代になると、さらに大きな穴窯が作られます。全長25メートルもある穴窯を使い、大量の越前焼を一気に焼き上げていたようです。穴窯の付近には多くの陶工が集まり、越前焼生産基地が完成します。
【徐々に衰退する越前焼】
室町時代後半から江戸時代後期にかけて、越前焼は徐々に生産量が減少してしまいます。江戸時代後期には愛媛県などから新たな技術も伝わりましたが、衰退の勢いは止まりませんでした。
復興をかけて多くの人が尽力するものの再興はせず、そのまま衰退していってしまいます。ほかの焼物産業が日用品以外のさまざまな作品を生み出しているのに対し、越前焼は生活のための雑器作りにこだわっていたのが原因とされています。
【越前陶芸の建設により再興】
しかし、1970年頃になると福井県の支援もあり、越前陶芸村が建設されました。村の建設によって多くの陶工や人々が集まりはじめ、一時はかなり衰退していた越前焼も再び注目されるようになります。
2017年に日本六古窯が日本遺産に登録されたこともあり、越前焼の人気や注目度は一気に加速しました。
素朴でシンプルな越前焼の特徴
越前焼は華美な着色や装飾をしない、素朴でシンプルな味わいを特徴としています。越前土を活かす形で作られ、温かみのある土色に自然釉を組み合わせる形が魅力的です。また、質素ながら極めて奥深い風合いを感じられるのも特徴のひとつといえるでしょう。
【耐火・耐熱性が高い】
鉄分を多く含む越前土は耐火性や耐熱性が高く、高温で焼いても壊れにくい性質が特徴です。高温でしっかりと焼くことで越前焼特有の赤みや黒っぽい色合いが現れるだけでなく、焼き固まった粘土は丈夫で長持ちします。そのため、普段使うような日用品に向いている焼物といえるでしょう。
【越前焼独特のねじ立て成形】
越前焼の成形方法の中には、少し独特な「ねじ立て成形」と呼ばれるものがあります。主に大型の壺などを作る際に使われる技法で、「ふね」と呼ばれる丸太のような作業台に粘土の底板を固定して作業するのが基本です。そこにひも状に成形した粘土を重ねていき、円柱状に積み上げます。
最後にコテで表面をならし、全体の形を整えて完成です。大型の焼物はろくろなどで成形するのが難しいため、このような方法で形を作っていきます。
【灰釉や鉄釉を中心とした素朴な肌触り】
越前焼の多くは釉薬を使わずに作られていますが、薪の灰が自然に陶器にかかる「灰釉(かいゆう)」や鉄釉で仕上げられたものもあります。これらはどれも素朴な風合いが特徴で、越前焼らしいシンプルで温かみのある雰囲気を感じられるでしょう。
和モダンとして楽しめる焼物としても人気が高く、さまざまなシーンで活躍してくれます。
現代での使われ方とお手入れ方法
味わい深い見た目が魅力の越前焼ですが、実は強度も優れているのが特徴です。水漏れを起こしにくいために昔から水瓶などに利用されてきましたが、現在でもさまざまな場面で使用されています。茶碗や皿などの一般的な日用品だけでなく、最近ではワインカップやコーヒーカップなども登場し始めました。和食はもちろんですが、洋食の場面でも活用しやすい商品も増えています。
丈夫で使いやすい越前焼ですが、陶器は吸水性があるので使用に際してはいくつかの注意が必要です。
越前焼は特に水漏れをしにくい特徴を持ちますが、長時間水気に晒したままだとカビが生えるリスクがあります。そのため、水に浸け置きするのは避けた方が良いでしょう。使ったあとはできるだけ早く洗い、乾燥させてから収納します。
また、電子レンジやオーブン、食洗機での使用の可否は製品ごとに異なります。購入時にしっかりと確認し、使用可能な場合でも製品を傷めないように使い過ぎには注意してください。
越前焼の見学・体験ができる場所
越前焼の館(越前焼工業協同組合)
所在地 | 福井県丹生郡越前町小曽原5-33 |
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電話番号 | 0778-32-2199 |
定休日 | 年末年始 |
営業時間 | 10:00~16:00(土日祝は9:00~17:00) |
HP | https://www.echizenyaki.com/ |
備考 | 館内見学、体験、オンラインショップなど |
叢至塾(そうしじゅく)
所在地 | 福井県福井市小幡町3-312 |
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電話番号 | 0776-85-1411 |
定休日 | 不定休(お問い合わせください) |
営業時間 | 9:00~12:00、13:00~18:00 |
HP | http://www.soushi-j.com/ |
備考 | 陶芸体験 |