越前瓦

越前瓦

越前瓦とは

越前瓦(えちぜんがわら)とは、福井県越前地区で生産されている伝統的な瓦です。

渋い魅力のある銀鼠(ぎんねず)の色が特徴で、越前瓦の銀鼠の屋根が葺かれた家が建ち並ぶ光景は、福井県では一般的に見られるものです。

凍害に強いために東北地方や北海道にまで広まった越前瓦は、寒冷地で高く評価されており、現在も多くの伝統的な建築物を守っています。

越前瓦の歴史と、名声を広めた北前船

越前瓦のルーツとなったのは、越前地方で古くから行われていた陶器の生産です。

奈良時代にはすでに焼きものの生産が行われていたと考えられており、北陸地方では最も古い窯業生産地です。

平安時代末期に使用されていた窯の跡が200以上も発掘されており、その頃はおもに壺などの日常生活品が生産されていました。

越前で瓦が生産されるようになったのは1500年代後半からで、織田信長の家臣・柴田勝家が越前の統治を任された頃です。

勝家が入城した北ノ庄城や、養子の柴田勝豊が築城した丸岡城には石瓦が葺かれていましたが、配下の佐々成政が築城した小丸城には「いぶし瓦」が使われていました。

しかし、いぶし瓦は耐久性に問題があったために、北陸の厳しい寒さによる凍害を受けやすかったので、凍害に強い瓦の生産を目指して研究が重ねられていくことに。

1601年に徳川家康の次男・結城秀康が北ノ庄城を新たに築城し、1624年には福井城と改名。

この間にも多くの瓦が生産されましたが、まだいぶし瓦が主流で、凍害の影響を受けていたと思われます。

1600年代中頃から釉薬を用いた赤瓦が生産されるようになり、より高温で焼成することができるようになったために、凍害の影響を受けることが少なくなりました。

「越前赤瓦」と呼ばれたこの瓦は高い評価を受け、越前のみならず他国へも流通し、特に寒冷地の建築物に広く採用されることに。

日本海沿岸を行き来していた貿易船「北前船」によって、遠く東北や北海道にまで運ばれた越前瓦は、函館奉行所などの重要な建築物の屋根にも使用されました。

のちに越前瓦はさらに高温で焼成されるようになり、酸化鉄を混入させた釉薬(ゆうやく)を使用するようになると、現在のような銀鼠色が主流に。

福井の街並といえば銀鼠の屋根が並ぶ光景といわれるほど、地場産業として定着しています。

強さと美しさを併せ持つ越前瓦の特徴

越前瓦の特徴の一つは、寒冷地の厳しい気候に耐える材質を持っていることです。

瓦には本来、多数の微小な穴が存在しているため、その穴から水分を吸収してしまうと冬季には凍って膨張し、ひび割れの原因になります。

越前瓦は1200℃前後の高温で焼成するため、焼き締められて微小な穴がほとんどなくなり、水分の吸収率が非常に低く抑えられることに。

そのため寒冷地でも瓦のひび割れのような凍害を受けにくく、耐寒性の高い瓦として高い評価を得ているのです。

また、高温での焼成は、瓦の耐久性の向上にもつながっています。

雪国では屋根に大量の雪が積もり、大きな重量がかかるため、それに耐えられる屋根の耐久性が求められます。

屋根の雪下ろしもしなくてはならないので、除雪作業の衝撃を受けても壊れない強さも必要です。

越前瓦はそのどちらにも耐えられる高い耐久性を持っているので、ひび割れや破損のしにくい丈夫で長持ちする瓦として愛用されることに。

さらに、ただ硬いだけではなく滑りにくいことも特徴の一つで、屋根に上がって除雪作業を行うときには安心感があります。

越前瓦はこのように実用的なメリットがありますが、趣深い色合いも高い人気を得ている理由の一つです。

「銀鼠」と表現される越前瓦の色は、伝統的な和風建築を上品に見せ、飽きがこないので長く使用することができます。

洋風建築にもマッチするため、明治以降に建てられた洋館の屋根にも使用されてきました。

また、銀鼠の色だけではなく紫褐色の色の瓦もあり、越前瓦を象徴する色としておもに北国で愛されています。

越前瓦の現代での使われ方とお手入れ方法

越前瓦は凍害に強く、耐久性の高い瓦です。

凍害に対する強さはJIS規格により定められた公式の試験で証明されており、長く受け継がれている伝統が生み出す製品は、現在の工業製品としても高い評価を獲得。

その確かな実績を背景に、特に寒冷地で広く使用されています。

また「曲げ破壊荷重」と「吸水率」という、瓦の耐久性を証明する指標もJISで定められた試験によって確認され、JIS規格を大きく上回る数値を計測。

曲げに強いことは、屋根に積もった大雪の重みに耐えられるということであり、吸水率の低さは凍害を防ぐことにつながります。

このことが豪雪地帯では特に評価され、屋根瓦として広く使用されているのです。

また、越前瓦には洋風建築にも合うカラーの製品が用意されており、おしゃれなワインレッドや、素朴なソフトブラックなどの瓦が好評です。

越前瓦は屋根瓦としての用途のほかには、タイルのように歩道に敷き詰めたり、ビルの外壁にも使用されています。

越前瓦のタイルは滑りにくいという特徴があるので、歩道にも適しているのです。

外壁に使用される越前瓦は、その耐久性の高さを活かして自然災害から建物を守っています。

屋根瓦として使用される越前瓦は、普段のお手入れ方法は特に必要ありません。

自然災害などでダメージを受け、瓦に割れや欠けが発生したときには、雨漏りを防ぐためにその部分の瓦だけを交換するとよいでしょう。

また、屋根の棟の部分に塗られている漆喰(しっくい)に経年劣化が見られる場合は、塗り直すなどの補修をすれば継続して使用することができます。

越前瓦の見学・体験ができる場所

越前セラミカ

所在地 福井県越前市池ノ上町5-12
電話番号 0778-24-0832
定休日 日祝
営業時間 8:00~17:00
HP https://e-seramika.com/
備考 【工場見学】 工場見学を受け入れています。詳しくはお問い合わせください。

新谷窯業

所在地 福井県丹生郡越前町小曽原111-15-2
電話番号 0778-32-2030
定休日 土日祝
営業時間 8:00~17:00
HP http://www4.ttn.ne.jp/~shintnyg/
備考 【越前瓦の販売】 越前瓦各種の販売を行っています。

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