知花花織とは
知花花織(ちばなはなおり)は、沖縄県沖縄市知花の地で誕生した織物です。
連続した幾何学模様を散りばめた「紋織物」にあたる知花花織。ビビットな色使いは非常に美しく、見ている人の心を楽しませてくれます。
100年以上の歴史を誇り、現代では沖縄を代表する伝統工芸品として成長を遂げました。
知花花織の歴史と時代を超えた情熱
知花花織の起源は、諸説ありますが1701~1800年頃といわれています。現在の沖縄市にあたる旧美里村周辺にて、花織がつくられるようになったことから「知花花織」と名付けられたそうです。
琉球王朝時代と呼ばれていた1701~1800年頃。中国や南アジアと深い親交があった琉球王国には、多くの文化が流入してきていました。知花花織を含め、花織のルーツは南アジアから伝えられたものといいます。
当時は琉球王府への上納品として、数多くの花織が生み出されていました。しかし、王府が定めた厳しい条件のもと製作されていたものがほとんど。上納品の花織に関しては「御図絵」という制約が設けられており、デザインを統一したうえで琉球王府に納めなくてはなりませんでした。
そのような状況下において、知花花織は徴税を免れます。そのため、他の花織と比較してもデザインの自由度は著しく高かったのです。琉球王国では大変珍しい存在として知られ、一躍有名になっていきます。
1801~1900年頃には技術面も確立し、知花村で催される祭事にも使用されていました。特に、旧暦の8月14日に行われるウマハラシ―(馬競争)や、8月15日のウスデーク(臼太鼓)が代表的です。主に五穀豊穣を願う祭事において、知花花織は非常に活躍しています。
時代を牽引してきた知花花織でしたが、明治以降になると徐々に勢いが衰退していきます。その後、第一次・第二次世界大戦によって沖縄は甚大な被害を受けてしまったのです。これらの影響により、受け継がれてきた知花花織の技術は完全に途絶えることとなりました。
しかし、「知花花織の伝統を守りたい」と考えた沖縄の人々の尽力により、1989年に復元に成功。実に100年ぶりに、沖縄で奇跡の復活を遂げます。これにより、かつての職人が培ってきた技術は、現在まで絶え間なく継承され続けているのです。
「革新的なデザイン」が魅力的な知花花織の特徴
知花花織の特徴は、自由度の高い「革新的なデザイン」です。
木綿を主に使用することが多いものの、絹・芭蕉・羊毛などの異素材も取り入れています。また、琉球の歴史を通じて培われてきた「デザインの自由度」は現代の知花花織にも、しっかりと引き継がれているのです。
知花花織は、織り始め~織り終わりまで同じ模様が続いていくわけではありません。模様の入り方が少しずつ異なっていることもあって、とても奔放な印象を受けます。
また、紺色の生地をベースに、個性豊かな幾何学模様が何重にも織り重ねられています。その模様はまるで花のようで、見ている人の心を和ませます。手作業で丹念に織られる知花花織のデザインは精巧で美しいのです。
実は、知花花織と通常の花織には異なる点があります。
通常の花織で模様を織り出していく際は、横糸を浮かす作業工程が必須です。しかし、知花花織は経糸を浮かすことで模様を織り出していく流れとなっています。このように、縦方向へと柄をつないでいく経浮(たてうき)花織、刺繍のように直接布地へと柄を織り込む縫取(ぬいとり)花織の2種類に分けられています。
この作業工程によって、生地全体にさらなる立体感が生まれます。こうして、知花花織の最大のポイントともいえるデザイン・模様がより際立ち、表情豊かな逸品が仕上げられていくのです。
知花花織は、「デザイン~製織」までに多くの工程を経る必要があります。特に製織で用いる方法は非常に複雑なものとなっており、特に時間を要してしまうとのこと。織り進められたとしても、1日にたった数10cmほどになります。
長い時間をかけて、ようやく完成に至る「知花花織」。斬新できめ細やかなデザインは、多くの職人の惜しみない手間によって紡がれています。
知花花織の現代での使われ方とお手入れ方法
知花花織は、主に着物や工芸品として使用されています。また、祭事に用いられる場面も多かったため、上着・胴衣も製作されていました。
着物は留袖・振袖など、いくつかの種類に分類されています。知花花織に関しても同様に区別されているため、目的に応じて製品をセレクトできます。
華やかなイメージを持つ知花花織は、天然染料を使用して丁寧に色付けを行っています。そのため、優しく、しなやかな風合いも楽しむことができるのです。
そして、知花花織は現在着物以外の製品づくりにも力を入れています。
財布・ネクタイ・名刺入れをはじめ、日常生活にも取り入れやすい製品がメインとなっているようです。その他に、結婚式で使用されるリングピローも販売が開始されています。伝統や固定概念にとらわれることなく、数多くの製品を生みだし続けています。
また、知花花織のお手入れ方法を説明していきます。
コースター・ランチョンマットなど、綿糸を使用した製品が汚れた場合について見ていきましょう。容器にぬるま湯を溜めた後、少量の中性洗剤を含ませます。そのまま製品を浸けて、軽く押さえ洗いを行っていくだけです。
乾かす際は、陰干しをすることをおすすめします。タオルなどの布で水分を除いた後、製品を平たく伸ばしていくと綺麗に乾きます。もしシワが気になる場合は、製品を十分に乾かした後に当て布をしてアイロンをかけてください。
しかし、織物に使用している糸・染料の種類によってお手入れ方法は異なります。実際に購入する際に、職人への確認を行うと良いでしょう。
知花花織の見学・体験ができる場所
知花花織プロジェクト
所在地 | 沖縄県沖縄市知花5-6-7 |
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電話番号 | 098-921-1187 |
定休日 | 土・日・祝祭日 |
営業時間 | 9:00~17:00(見学は16:00まで) |
HP | https://shop.chibana-hanaori.com/about |
備考 | 【体験メニュー】コースター 700円 、ストラップ 1,800円〜 |
コザ工芸館ふんどぅ
所在地 | 沖縄県沖縄市中央1-11-2 |
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電話番号 | 098-934-2213 |
定休日 | 月曜日、年末年始休業あり |
営業時間 | 11:00~19:00 |
HP | https://fundou.jimdofree.com/ |
備考 | 知花花織を使用した商品の展示・販売、実演イベント(不定期開催)等を行っています。 |