樺細工とは
樺細工(かばざいく)とは、秋田県仙北市で作られている日本の伝統的な木工工芸品です。
「樺」という名前が使われているものの、実際に利用されているのは「山桜」の樹皮であり、樺類は使用されていません。山桜の樹皮の光沢、独特な色合いを活かした工芸品であり、幅広く愛されています。山桜の樹皮はあめ皮、ちらし皮、ひび皮など10種類以上も存在しています。ひとつひとつの製品の用途に合った樹皮を使用しており、仕上がった樺細工製品には同一のものがない点も特有です。
樺細工は、秋田県で初の伝統工芸品認定をされた貴重な工芸品です。現在は秋田県のみに伝承されていて、日本を代表する工芸品となっています。また、現代でも使用できる製品がある点はとても印象的です。
樺細工の歴史と藤村彦六
樺細工の起源は、1781年から1788年のあいだとされています。秋田県阿仁地方から、当時武士だった藤村彦六によって技術が伝えられました。
当初、樺細工は下級武士のための副業のようなものでしたが、角館を治めていた佐竹北家により大事に育まれた結果、角館の地場産業として根付いています。それまでは、下級武士の困窮を防ぐものでしかありませんでした。
その当時の製品としては、茶筒や小箱、煙草入れなどが有名でした。これらの製品は、参勤交代のお土産として好まれていたそうです。
明治時代に入ると、武士であることを辞め、樺細工職人になる者も増え始めていきました。ちょうどそのころ、丸亀こと「長松谷商店」などの力を持った問屋が現れ、結果として樺細工は安定した産業につながり、発展。その後、名工と呼ばれる「柳宗悦」などにより、技術は改良、発展していき、商品の価値はどんどん高まっていきました。また、長松谷商店は職人の育成にも優れていて、経徳斐太郎(けいとくあやたろう)や黒沢清太(くろさわせいた)などは「木地もの」という技法を開発し、のちの時代に強い影響を与えました。
さらに、1965年以降には「たたみもの」という新たな技法の開発もされています。この優れた技法は今日まで伝承されており、現代の暮らしに合った製品の開発もされています。これらの歴史をたどり、現在、樺細工は角館の基幹産業となるまで成長しました。
「3つの技法」がある樺細工の特徴
樺細工の特徴は、防湿、防乾に優れており、なおかつ製品が丈夫でしっかりしているところです。
山桜の樹皮特有の利点である色合いや、模様の素朴なきれいさを活かしている点も特徴の一つといえます。
樺細工には、以下の3つの技法があります。1つずつご紹介していきます。
1.型もの
型ものとは、木の型に合わせて芯を作り、その芯を中心に樺を巻いていき筒状のものを作る技法です。樺を巻いて貼り付ける際には、樺がはげないように熱加減を丁寧に調節する必要があり、とても細かい作業を必要とします。代表的な製品としては「茶筒」が挙げられます。
2.木地もの
木地ものとは、下地に木地を使った製法で、箱ものが多く作られています。なかには文様を置く模様付けの技術を利用したテーブルなどの大きな製品もあります。
3.たたみもの
たたみものとは、磨いておいた山桜の樹皮を数十枚と重ねて貼りつけ、その状態からさまざまな形に彫刻していく技法です。たたみもので作られた製品は現代でも使用されることがあり、具体的にはブローチやループタイに使用されています。これらは、樺を極限まで磨き、樺本来の持つ光沢を出すために、かなり細かい手作業が必要です。
樺細工の現代での使われ方とお手入れ方法
樺細工には、乾燥したものの湿度を一定に保つ特徴があり、現代では茶筒や煙草入れとして利用されています。色は一般的には暗い赤色となりますが、山桜の樹皮の状態によって変わります。
樺細工製品の扱いで一番注意するべきことは、直射日光下、熱源近く、湿気の多いところへ放置しないことです。これらの場所へ放置してしまうと山桜の樹皮の剥離につながり、製品の寿命を縮める結果になりかねないため、注意が必要です。
樺細工製品のお手入れ方法は、製品の種類によって異なるため、1つずつご紹介していきます。
茶筒、文具類
茶筒や文具類に関しては、水気を避けるようにしてください。もし、水に濡らしてしまったら、すばやくふき取るようにしましょう。
山桜の樹皮が赤色をしている製品は、手の油分が付着し、だんだんと光沢がなくなっていきます。その場合は、乾いたやわらかい布で軽くこすると光沢が戻ります。
硬い布や強くこすってしまうと逆効果なため、注意が必要です。もし、乾いたやわらかい布でこすっても光沢が戻らない場合は、白木たんす用のワックスを少し塗って、ワックスが乾燥したら乾いたやわらかい布で軽くふき取ってみてください。もし、それでも光沢が戻らない場合、もしくは長年愛用している大事な樺細工製品でプロに任せたいという場合は、山桜の樹皮の磨きなおしを請け負っている工房があるため、そちらに依頼するようにしましょう。
トレイ、プレート類
トレイ、プレート類は水洗いしても大丈夫です。汚れがひどい場合は中性洗剤で洗い、水で流してから乾燥させるようにしましょう。つけ置き洗いは、樹皮が剥離する可能性があるため、絶対に避けるようにしてください。
樺細工の見学・体験ができる場所
仙北市立角館樺細工伝承館
所在地 | 秋田県仙北市角館町表町下丁10-1 |
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電話番号 | 0187-54-1700 |
定休日 | 不定休 |
営業時間 | 9:00~17:00 |
HP | https://www.city.semboku.akita.jp/sightseeing/densyo/ |
備考 | 樺細工体験コーナー、工芸品展があります。 |
角館桜皮細工センター武家屋敷通り店
所在地 | 秋田県仙北市角館町表町下丁18 |
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電話番号 | 0187-55-5631 |
定休日 | 不定休 |
営業時間 | 10:00~16:30(夏季9:00~17:00) |
HP | http://www12.plala.or.jp/kabasen/#team-section |
備考 | 10:00~16:00まで実演あり。制作した商品をその場で買い取ることも可能です。 |