金沢箔とは
金沢箔とは、主に石川県金沢市で作られる純金、純銀、純銅などを1万分の1ミリ程に薄く伸ばした「箔」と呼ばれるもの。現在、国内で生産される金箔のほとんどは金沢で作られています。
金閣寺や日光東照宮などの歴史的建造物、美術品、食用品など、幅広い用途で使われる金沢箔。1977年には、優れた伝統と技術が認められ、経済産業省によって国の「伝統的工芸品」に指定されています。
困難な時代を乗り越え発展した金沢箔の歴史
金箔や銀箔の製造が、いつ頃から日本で始まったかは明らかになっていません。しかし、日本の文化において重要な役割を担ってきたことは、数多くの文化遺産から実証されます。
古くは752年、大仏開眼供養が行われた東大寺大仏殿の鴟尾(しび)は金箔によって輝いていたと伝えられています。その後も、金箔は寺院や仏像彫刻、襖絵や屏風をはじめとする調度品などの芸術性を高める重要な材料でした。また、木を素材とする建築物や家具、器物の耐久性を高める役割も果たしてきました。
金沢での金や銀箔の歴史は、戦国時代後半に遡ります。当時、金沢を治める加賀藩の前田利家が、1593年に国元へ送った書が残っています。書には、金と銀の箔打ちを命じる記述があり、このことから藩内で金や銀箔の製造が行われたと考えられます。
江戸時代になると、幕府は1667年に各地での貨幣製造を禁じ金銀銅の地金を管理します。1696年には江戸に箔座が設定され全国の金と銀箔の製造・販売は禁止に。加賀藩もそれに従いました。
しかし、幕府の統制の中、箔打ちの伝承や権利取得の活動を続けた金沢の箔職人たち。1856年、金・銀箔については打ち直しを名目とした箔の細工場(さいくば)が金沢にできます。さらに1864年、金沢の町人であった越野佐助が、金沢城の修復や藩の御用箔に限る箔打ちを幕府から許可されます。
明治時代に入ると、箔の統制が解除され金沢箔の生産は増加。また、箔の有志同業組合の結成によって品質・価格の協定や生産制限を実施し、金沢箔の産業は大きく成長します。その後、生産効率を飛躍的に上げる箔打ち機の開発が成功。また、主に兵庫県の名塩(なじお)産であった箔打ち用の和紙も、石川県川北町での製造に成功するなど、製箔道具が充実します。
第二次世界大戦時には、金の使用制限や奢侈品(しゃしひん)等製造販売制限規則によって金沢箔の製造は困難になります。しかし、戦後になると金沢箔は徐々に復活。時代が変わっても装飾品などを美しく輝かせる材料として人々に愛され続けています。
繊細な装飾を可能とする金沢箔の特徴
金沢箔には金箔、銀箔、プラチナ箔、洋箔(真鍮箔)、アルミ箔などがあります。その中でも代表的な金箔のほとんどは、純金に微量の純銀と純銅を合金しています。理由は、打ち延ばししやすく、配合量で色を変えることが可能なため。色は金の純度が高いと黄金色に、銀の量を増やすと赤みが消え、銅の量を増やすと赤みを帯びます。
金沢箔の特徴は、非常に薄い厚さと、打ち延ばされても失われない金や銀の輝きです。厚さは1万分の1ミリ程度で、卓越した職人の技術を必要とします。また、この薄さがさまざまなものへの貼り付けや繊細な装飾を可能としています。
現在、金沢箔の金箔は2種類の製造方法があります。ひとつは、400年以上の続く伝統の技である「縁付(えんつけ)」。もうひとつは1960年代に始まった「断切(うちきり)」です。
「縁付」は、特殊な粘土を混ぜ入れた雁皮(がんぴ)紙を灰汁(あく)処理した「箔打ち紙」を使って金箔を打ち延ばす製法。「箔打ち紙」は金箔の質に大きく影響を及ぼすため、紙仕込みは金を打つよりも長い時間が掛けられています。現在は、箔打ちがハンマーでの手打ちから機械打ちへ変わりました。「断切」はグラシン紙を打ち紙として使う製法。一度に多く生産できるため、流通が増えています。
金沢箔の現代での使われ方とお手入れ方法
現在、金沢箔は伝統的な工芸品などから、新たな製品まで、幅広く使用されています。伝統的なものとしては金閣寺などの歴史的建造物の修復。また、仏壇、仏具、漆器、陶磁器、金屏風、織物に使用する金糸など、さまざまです。
現在では、商業施設の装飾、現代の暮らしに馴染むテーブルウェアやインテリアなどに使用されています。また、料理を華やかにする食用金箔や化粧品、金箔の打紙製法加工で作られる「あぶらとり紙」も大変人気です。
金箔が使われている食器や器は、柔らかいスポンジを使い中性洗剤で優しく洗ってください。なお、食器洗い乾燥機の使用は避けてください。液体を入れたままにすると剥離する可能性があるため、長時間入れないようにしましょう。
金箔が飾られた仏具のお手入れは、直接手で触れないようにしましょう。汗ばんだ手で触ると金箔に指紋が付いてしまう場合があります。毛払いなどで軽く埃を払う程度にしてください。
金沢箔の見学・体験ができる場所
金沢市立安江金箔工芸館
所在地 | 石川県金沢市東山1-3-10 |
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電話番号 | 076-251-8950 |
定休日 | 火曜日(祝日の場合は翌平日)年末年始(12月29日~1月3日)展示資料の整理等のために必要とする期間 |
営業時間 | 9:30 ~ 17:00 (入館は16:30まで) |
HP | https://www.kanazawa-museum.jp/kinpaku/index.html |
備考 | 金箔の性質について、製造工程、美術工芸品の展示鑑賞料金:310円(高校生以下は無料) |
かなざわカタニ
所在地 | 石川県金沢市下新町6-33 |
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電話番号 | 076-263-6111(体験専用076-231-1566) |
定休日 | 年中無休(臨時休業あり) |
営業時間 | 9:00~17:00(最終受付16:00) |
HP | https://www.k-katani.com/ |
備考 | 販売、金箔貼り体験 体験:1,000円(税込)~(金箔・材料費を含めた料金) |